T類の性能

T類の性能って?と先輩に聞かれて、全然わかりませんでした。

これは耐空性審査要領のT類のところ(第Ⅲ部)だけ見ていてもわからないのです。

広辞苑ほどの厚さがある『耐空性審査要領』は3つの章立てになっています。

I.航空法施行規則 付属書第一

Ⅱ.航空法施行規則付属書関連の告示

Ⅲ.耐空性審査要領

 

一般的にはⅢの第Ⅱ部(N,U,A,C類)、第Ⅲ部(T類)さえ見ておけば事足りるのですが性能に関しては

I.航空法施行規則 付属書第一

の2章を参照しましょう。

そこにはこう書いてあります。

◆◆

2-2性能

2-2-2-2耐空類別が飛行機輸送Tである飛行機(以下「飛行機輸送T」という。)、耐空類別飛行機輸送Cである飛行機(以下「飛行機輸送C」という。)及び1-4の規定により国土交通大臣が認定して告示した型式の飛行機は次の性能を有するものでなければならない。

a 速度が臨界点速度以上となった後に1個の臨界発動機が停止した場合においても、安全に離陸できること。

⇒簡単に言うとENG FAIL AFT V1でも安全に上昇出来る

b 離陸出力又は推力の許容時間を経過した後も1個の臨界発動機が不作動でありかつ残りの発動機が連続最大出力又は推力の限界内で運転している状態において、飛行場の周囲を高度を維持しながら1旋転できるような高度まで上昇できること。

⇒MCT(Maximum Continuous Thrust )でリバーサルDEPのようなSIDも対応可能

c 離陸経路上のいずれの点においても安全上必要な最低限度以上の勾配で上昇できること。

⇒ファーストセグメント~の話です。

◆◆

口述は得てしてこういう質問から始まります。T類の性能要件を問い易いからです。

9.平札と切り札

trump

いとこが教えてくれた受験突破の為の切り札と、ワイルドカードとは。
受験記更新しました。

8.CAC分析

のーと

8.CAC分析

を書きました。

前回の続きです。
意外に読んでくださってる方が多くて嬉しかったので久々に8000文字オーバーの記事を書きました。
読んでくれる方々に損はさせまいとボリューム多めの内容になっています。

勉強の息抜きに。
思考方法など、参考になればと思います。

7.夢に期限を

NKJ56_taketomishimanoumitosora_TP_V

グアムでの決意から進路の取捨選択まで。

久々に時間が出来たので7.と8.を連続で書きたいと思います。

こちらから⇒夢に期限を

耐空性審査要領 T類 目次

 

耐空性審査要領目次

耐空性審査要領目次付録

 

個人的に耐空性審査要領のコピーでない目次が欲しかったので作ってみました。
口述審査の参考に。

Overweight Landing時の許容降下率は?

飲み会でENGINE FAILURE AFTER V1の話題になりました。
パイロットだけで飲んでいると共通の話題として仕事の話をしがちです。
離陸してすぐに片方のエンジンが停止した場合どうするか。

ジェッション(燃料投棄。別の言い方だとFuel dump。)してMAX landing weight以下にしてから降りるのか、緊急なのでそのままオーバーウェイトで降りるのか。

結論から言えば、安全の為に良いと判断できるのであればキャプテンの裁量で決めれます。
そしてその両方が正解。安全であれば、です。

「ところで、オーバーウェイトランディングだとどれ位の降下率まで認められてるんだっけ?」

という話になり、「確か300ft/minだったかなー」とか「それに安全率1.5を掛けた450ft/minじゃないっけ?」
など色んな意見が出ました。
初期訓練で耐空性審査要領について結構やったのになーと言いながらも、分からないことはすぐに調べる辺りが皆さん流石です。

◆◆
探してみると確かにありました。

耐空性審査要領の設計の欄です。
P.222-6
3-6地上荷重
3-6-2-1着陸状態においては飛行機は次の状態で接地するものとする。
c.『設計離陸重量(最大降下率よりも低い降下率での着陸における最大重量)で1.8m/s(6ft/s)の制限降下率』
つまり、最大離陸重量でも6ft/min=360ft/min以下の降下率で接地すれば強度的は保証されます。
ちなみにb.設計着陸重量(=最大着陸重)では 10ft/s=600ft/minまで強度が保証されています。これは通常の降下率に近いのでノーフレアですごい衝撃になりそうです。

T類は360ft/min以下の降下率で接地すれば強度は保証される。
というのは覚えておきましょう。

360ft/minの降下率は思ったより大きい印象です。やろうと思えばすこし接地が伸びますが、地面を撫でるような着陸はパイロットなら誰でもできると思います。
通常時はオートブレーキのセンサーが接地したのか迷うのでしませんが。

実際シングルエンジンになったら私ならレーダーベクターをリクエストしてチェックリストを完了しながら即行空港に引き返すと思います。
SID中ならとりあえずFollow、MHA位までの高度を獲得しといた方が何かと余裕が出ます。とくに混雑している空港なら。
VMCなら混雑状況を見て、トラフィックパターン1周で降りれるならDownwindに入ってもいいと思います。

シングルエンジンででもジェッションを選択する時ってどんな時なのか?と考えました。

1.大前提として性能上その重量では滑走路をオーバーランしてしまう。
2.又は脚に不安があるとき
2.1.パンクしている。
2.2ブレーキ火災等でタイヤが損傷している。
2.3そもそもタイヤが出ないから胴体着陸。
3.離陸後滑走路が閉鎖された。例えば自機よりも重篤なエマージェンシー機体があり着陸後の滑走路閉鎖が考えられ、ダイバートを余儀なくされた場合近くの滑走路が全て短すぎる時。

MECEからは外れてます。こういうのは考えても全部を網羅するのは不可能です。
だからこそ想像力って大事です。フライトは不確定要素が多すぎるのでツリー状に場合分けするのは「机上の空論」です。
実際に使えなければなりません。

月に一回とんでもないエマージェンシーが発生したら自分ならどうするかをイメージフライトしろと教官は言います。
これをやりだすとシステムのテキストを開いたりし始めることになるので永遠に終わらず夜が明ける、なんてことはザラだそう。

◆◆
もうすぐハドソン川の奇跡が公開されますが、たぶんサレンバーガー機長は両エンジンが止まった時のシミュレーションフライトをしたことがあったんじゃないかなと思います。
自分の機体の揚抗比は分かっていても、その場の降下率とGSからの進出距離は風向きで大きく変わるので現在位置から空港まで届くか即座に判断するのはとても難しいと思うからです。それを機長はすぐに判断していました。
本当にフライトは何が起こるか分からないのでなるべく乱してイメージフライトをすることが大事です。
そして分からないこと、操作の根拠が不明なものは徹底的に調べること、クロスチェックの仕方も決めること、それが上手くなる秘訣のようです。

耐空性審査要領には何が書いてあるか

    耐空性の検査

耐空性審査要領の内容に入る前に
航空機の飛行の安全性を担保するのに必要な証明には何があるか見てみます。

①耐空証明・・・法11条『航空機は有効な耐空証明を受けているものでなければ、航空の用に供してはならない。但し、試験飛行等を行うため国土交通大臣の許可を受けた場合は、この限りではない。』

②型式証明・・・法第10条『国土交通大臣は、次に掲げる航空機については、設計又は製造過程について検査の一部を行わないことができる。 一、第十二条第一項の型式証明を受けた航空機…』

 

2つの検査が必要です。

耐空性審査要領はこれら2つの証明を行う際の基準が書かれています。これらは航空機製造メーカーに対する法の要求です。

 

◆◆

   【耐空性とは?】(=Airworthiness)

法第10条

耐空証明に関しては航空法第10条で規定されています。

法第10条『国土交通大臣は申請により、航空機について耐空証明を行う。(滑空機を除く)』

3項『耐空証明は、航空機の用途及び国土交通省令で定める航空機の運用限界を指定して行う。』

4項『…当該航空機が次に掲げる基準に適合するかどうかを設計製造過程及び現状について検査し、これらの基準に適合すると認められるときは、耐空証明をしなければならない。』

 

つまり耐空性審査の流れは

設計

製造

現状

 

の3ステップがあるのですが、一機毎に設計から現状まですべての検査を行っていてはコストがかさんで仕方ありません。

そこで設計、製造過程に関しては型式(B737とかA380とか種類)ごとに重複する項目に関しては型式証明によって検査の一部を省略します。

◆◇⇒型式証明は耐空証明検査を効率よく行うための証明◇◆

細かく言うと強度と構造に係る審査の一部を省略することができます。(※下記参照)

そして型式証明はメーカーに対して行うものなのでエアラインは持っていません。

 

では、具体的な検査内容を見てみます。

法10条4項

一、安全性を確保するための強度構造及び性能についての基準⇒安全性の基準(付属書第一

二、騒音の基準                                                                                     ⇒環境への基準(付属書第二

三、発動機の排出物の基準                                                                 ⇒環境への基準(付属書第三

 

ICAOでは国際基準としてAnnex 8を制定しています。

航空機は国際的な工業製品なので国際基準が必要だからです。

Airworthiness(耐空性)という言葉はよく出てくるので覚えておいた方がいいと思います。

上記の付属書というのはICAOのAnnex 8を翻訳したものです。

航空法施行規則付属書第一『航空機及び装備品の安全性を確保するための強度、構造及び性能についての基準』というタイトルで耐空性審査要領の前文として収録されています。

 

ICAO Annexの参照方法はコチラを読むといいと思います。

 

日本の耐空性審査要領はICAOのAirworthiness Manual(Annex8の細則)に則った米国FAR(アメリカの航空法) Part25(T類)「Airworthiness standards」に準拠しています。

Annex8⇒FAR Part25⇒耐空性審査要領

 

耐空性審査要領は広辞苑のような分厚さでどこから読んでいいか困るのですが、一般的な訓練生が読むべきは

小型機による初期訓練では

II 飛行機(普通 N、実用 U、曲技 A、輸送 C FAR Part 23に準拠

エアラインのジェット機訓練では

III 飛行機(輸送 T FAR Part 25に準拠

を開いてください。

◆◆

    耐空性審査要領の内容

よく口述審査で「耐空性審査要領には何が書いてある?」など聞かれます。

その答えは強度、構造、性能です。私も初期訓練では『強構性』などと覚えていました。

それぞれどの段階で審査するかというと

1.強度・・・設計段階(型式証明で一部省略可)

2.構造・・・製造段階(型式証明で一部省略可)

3.性能・・・飛行試験段階

で審査します。

蛇足ですが型式証明と試験飛行のサーキュラーのURLを掲載しておきます。

型式証明             http://wwwkt.mlit.go.jp/notice/pdf/201107/00005484.pdf

試験飛行             http://wwwkt.mlit.go.jp/notice/pdf/201401/00005486.pdf

 

耐空証明の有効期間は1年です。(法第14条)

ただし、航空運送事業の用に供する航空機については国土交通大臣が定める期間となります。

エアラインは基本的にCABから認められた整備規程に則り整備しいていますので毎回試験飛行を行っているようなものとして実質上記整備が行われている限り無期限、言い方を変えると毎フライトで耐空証明の有効期間を延長するような扱いになっています。

 

※また、耐空性審査要領に関して重要なのは時期によって内容が異なることです。これは離着陸性能の基準で関わってきます。今回は省きます。

◆◆

    運用限界等指定書

法第10条3項『耐空証明は、航空機の用途及び国土交通省で定める航空機の運用限界を指定して行う。』

とあるように耐空証明書とセットで必要なのが運用限界等指定書です。

 

内容は

————————-運用限界等指定書————————-

航空機の型式                                     エアバス式350型

航空機の国籍記号及び登録番号     JA1234

航空機の製造番号                            12345

耐空証明書番号                               2016-001

上記の航空機の用途及び運用限界を航空法第10条第3項の規定により下記により指定する。

用途:耐空類別  飛行機 輸送T

運用限界:飛行規程及び追加飛行規程の限界事項

 

平成28年1月1日

国土交通大臣

—————————————————————————

 

という風になっています。

用途がT類の用途に限定され、

運用限界は飛行規程及び追加飛行規程の限界事項となっています。

 

まず、耐空類別ですが

国交省のページに付属書第一の内容が載っています

http://www.mlit.go.jp/common/001048282.pdf

 

・飛行機 実用 U類         ⇒最大離陸重量 5,700kg 以下の飛行機であつて、飛行機普通 N が適する飛行及び 60°バンクを超える旋回、錐 揉きりもみ、レージーエイト、シャンデル等の曲技飛行(急激な運動及び背面飛行を除く。)に適するもの

 

・飛行機 輸送 T類         ⇒航空運送事業の用に適する飛行機

 

口述で聞かれたらこういう風に答えればいいと思います。

 

次に運用限界です。

飛行規程及び追加飛行規程の限界事項はそれぞれに1章に載っています。飛行規程は一般的にAFM(Airplane Flight Manual)と呼ばれます。AFMという言葉はよく出てくるので「メーカー(BoeingとかAirbus)が作成した限界事項だな」と思っておきましょう。

追加飛行規程とは改修、改造をした場合に新規に作成される規定です。

これらについてはメーカーではなく法がユーザーに求める要求なので次回書きたいと思います。

◆◆

航空機メーカーに法が求める耐空性をまとめると以下のようになります。

今回は青い部分について書きました。

 

耐空性審査要領

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