耐空性審査要領には何が書いてあるか

    耐空性の検査

耐空性審査要領の内容に入る前に
航空機の飛行の安全性を担保するのに必要な証明には何があるか見てみます。

①耐空証明・・・法11条『航空機は有効な耐空証明を受けているものでなければ、航空の用に供してはならない。但し、試験飛行等を行うため国土交通大臣の許可を受けた場合は、この限りではない。』

②型式証明・・・法第10条『国土交通大臣は、次に掲げる航空機については、設計又は製造過程について検査の一部を行わないことができる。 一、第十二条第一項の型式証明を受けた航空機…』

 

2つの検査が必要です。

耐空性審査要領はこれら2つの証明を行う際の基準が書かれています。これらは航空機製造メーカーに対する法の要求です。

 

◆◆

   【耐空性とは?】(=Airworthiness)

法第10条

耐空証明に関しては航空法第10条で規定されています。

法第10条『国土交通大臣は申請により、航空機について耐空証明を行う。(滑空機を除く)』

3項『耐空証明は、航空機の用途及び国土交通省令で定める航空機の運用限界を指定して行う。』

4項『…当該航空機が次に掲げる基準に適合するかどうかを設計製造過程及び現状について検査し、これらの基準に適合すると認められるときは、耐空証明をしなければならない。』

 

つまり耐空性審査の流れは

設計

製造

現状

 

の3ステップがあるのですが、一機毎に設計から現状まですべての検査を行っていてはコストがかさんで仕方ありません。

そこで設計、製造過程に関しては型式(B737とかA380とか種類)ごとに重複する項目に関しては型式証明によって検査の一部を省略します。

◆◇⇒型式証明は耐空証明検査を効率よく行うための証明◇◆

細かく言うと強度と構造に係る審査の一部を省略することができます。(※下記参照)

そして型式証明はメーカーに対して行うものなのでエアラインは持っていません。

 

では、具体的な検査内容を見てみます。

法10条4項

一、安全性を確保するための強度構造及び性能についての基準⇒安全性の基準(付属書第一

二、騒音の基準                                                                                     ⇒環境への基準(付属書第二

三、発動機の排出物の基準                                                                 ⇒環境への基準(付属書第三

 

ICAOでは国際基準としてAnnex 8を制定しています。

航空機は国際的な工業製品なので国際基準が必要だからです。

Airworthiness(耐空性)という言葉はよく出てくるので覚えておいた方がいいと思います。

上記の付属書というのはICAOのAnnex 8を翻訳したものです。

航空法施行規則付属書第一『航空機及び装備品の安全性を確保するための強度、構造及び性能についての基準』というタイトルで耐空性審査要領の前文として収録されています。

 

ICAO Annexの参照方法はコチラを読むといいと思います。

 

日本の耐空性審査要領はICAOのAirworthiness Manual(Annex8の細則)に則った米国FAR(アメリカの航空法) Part25(T類)「Airworthiness standards」に準拠しています。

Annex8⇒FAR Part25⇒耐空性審査要領

 

耐空性審査要領は広辞苑のような分厚さでどこから読んでいいか困るのですが、一般的な訓練生が読むべきは

小型機による初期訓練では

II 飛行機(普通 N、実用 U、曲技 A、輸送 C FAR Part 23に準拠

エアラインのジェット機訓練では

III 飛行機(輸送 T FAR Part 25に準拠

を開いてください。

◆◆

    耐空性審査要領の内容

よく口述審査で「耐空性審査要領には何が書いてある?」など聞かれます。

その答えは強度、構造、性能です。私も初期訓練では『強構性』などと覚えていました。

それぞれどの段階で審査するかというと

1.強度・・・設計段階(型式証明で一部省略可)

2.構造・・・製造段階(型式証明で一部省略可)

3.性能・・・飛行試験段階

で審査します。

蛇足ですが型式証明と試験飛行のサーキュラーのURLを掲載しておきます。

型式証明             http://wwwkt.mlit.go.jp/notice/pdf/201107/00005484.pdf

試験飛行             http://wwwkt.mlit.go.jp/notice/pdf/201401/00005486.pdf

 

耐空証明の有効期間は1年です。(法第14条)

ただし、航空運送事業の用に供する航空機については国土交通大臣が定める期間となります。

エアラインは基本的にCABから認められた整備規程に則り整備しいていますので毎回試験飛行を行っているようなものとして実質上記整備が行われている限り無期限、言い方を変えると毎フライトで耐空証明の有効期間を延長するような扱いになっています。

 

※また、耐空性審査要領に関して重要なのは時期によって内容が異なることです。これは離着陸性能の基準で関わってきます。今回は省きます。

◆◆

    運用限界等指定書

法第10条3項『耐空証明は、航空機の用途及び国土交通省で定める航空機の運用限界を指定して行う。』

とあるように耐空証明書とセットで必要なのが運用限界等指定書です。

 

内容は

————————-運用限界等指定書————————-

航空機の型式                                     エアバス式350型

航空機の国籍記号及び登録番号     JA1234

航空機の製造番号                            12345

耐空証明書番号                               2016-001

上記の航空機の用途及び運用限界を航空法第10条第3項の規定により下記により指定する。

用途:耐空類別  飛行機 輸送T

運用限界:飛行規程及び追加飛行規程の限界事項

 

平成28年1月1日

国土交通大臣

—————————————————————————

 

という風になっています。

用途がT類の用途に限定され、

運用限界は飛行規程及び追加飛行規程の限界事項となっています。

 

まず、耐空類別ですが

国交省のページに付属書第一の内容が載っています

http://www.mlit.go.jp/common/001048282.pdf

 

・飛行機 実用 U類         ⇒最大離陸重量 5,700kg 以下の飛行機であつて、飛行機普通 N が適する飛行及び 60°バンクを超える旋回、錐 揉きりもみ、レージーエイト、シャンデル等の曲技飛行(急激な運動及び背面飛行を除く。)に適するもの

 

・飛行機 輸送 T類         ⇒航空運送事業の用に適する飛行機

 

口述で聞かれたらこういう風に答えればいいと思います。

 

次に運用限界です。

飛行規程及び追加飛行規程の限界事項はそれぞれに1章に載っています。飛行規程は一般的にAFM(Airplane Flight Manual)と呼ばれます。AFMという言葉はよく出てくるので「メーカー(BoeingとかAirbus)が作成した限界事項だな」と思っておきましょう。

追加飛行規程とは改修、改造をした場合に新規に作成される規定です。

これらについてはメーカーではなく法がユーザーに求める要求なので次回書きたいと思います。

◆◆

航空機メーカーに法が求める耐空性をまとめると以下のようになります。

今回は青い部分について書きました。

 

耐空性審査要領

変針時の距離計算

大学の後輩で他社のMPLの訓練生がいよいよ訓練ということで初期訓練に使える変針時の計算について書きたいと思います。

訓練生に限らずパイロットは、「○○度変針するには何秒かかりどれくらいの距離が必要か」というのをしょっちゅう計算します。

特に周回進入においては時間を測ってターンの起点のタイミングを作るからです。

難しくはありません。一言で言うなら高校の数学ⅡBの内容が出来れば計算できます。

◆◆

circle to 16R

例えば、羽田34Lから16Rに周回進入する場合を考えます。
VORアプローチの場合はFinal Courseは332°で滑走路(337°)に対しては5°ずれています。
周回進入では基本的に45°カットでDownwindに乗っていくので337°+45°=022°
Final Courseからはトータル5°+45°=50°変針することになります。

トラパタ(トラフィックパターン)の時は90°変針のため計算がとても簡単なのですが周回進入だとこういった中途半端な角度の変針もあり得ます。基本的には以下の手順で求められます。

<手順>
1、その時の速度を決める
2、旋回半径を求める
3、作図して三角関数で距離も計算

◆実際に計算してみると◆
1.速度はFLAPにもよるので各々の飛行機の進入速度によりますが、例えば150ktとします。

2.旋回半径はパイロット電卓でもいいですし、パイロット手帳の付録のp.60の表を使ってもいいです。
150kt、25°バンクだと0.7くらいです。

3.作図しないと旋回中の進出距離が分からないので作図します。

上の図を拡大して点線で図形を足して三角形を作図しています。半径0.7NMの弧の長さを考えるよりもCROSSWINDに乗った時どこの位置まで進出しているか知るにはこの作図が楽です。

(フリーハンドなのでスケールが正しくないですがこんな感じです。)
circle to 16R2

上図で角度は求められていますし各三角形の底辺の長さがわかっていますのであとはtanを関数電卓で計算すればいいだけです。

circle to 16R3

これによりCROSSWINDにロールアウトした時には0.32NM進出していることが分かります。

タイムチェックのタイミングはCRS332にから022に旋回開始した時か、022に向いた時の2パターンが考えられますのでどちらも計算しとくとタイムチェックを忘れたときのセーフティーネットになります。

同様にしてCRS022から337の時も作図して45°変針の時の進出距離を求めてみましょう。150kt、Bank25°で0.3NM弱になるのではないでしょうか。

もちろん上記の計算にはBankレートは考慮されていません。0秒でBankを確立することは不可能なのでその分の余裕を考えた秒数を自分なりに持っておくことが大事です。

◆◆

パイロットの仕事というと「操縦」を思い浮かべると思いますが、準備が8割だと感じます。

アプローチチャートは同じなのに乗る機種ごとに進入速度が違うため、操縦方法が異なるからです。そのためにはこのような計算が必要です。

また、一度計算すれば万全という訳ではなく無風で計算しておいて、当日風によってBankの使い方を変えるのが操縦の醍醐味だと思います。これが残りの2割。

毎回反省点がでるのでその度に改善していくやりがいがあります。

周回進入はオートパイロットでもできなくはないですが、どうしてもコンピュータは操縦が遅いのでマニュアルでスムーズに操縦する方が上手くできる気がします。

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月額980円でAmazonのKindleで書籍が読み放題になりました。

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以前からアメリカをはじめ諸外国にはあったサービスなので待ちに待った、という感じです。
書籍が大好きな私は本に月1万円以上はかけているのでこれは本当にありがたいです。
今は約12万冊ですがまだまだ増えるでしょう。Unliitedで読める書籍に限りがあるので
これからも通常の書籍と並行して読んでいきたいと思います。

仕事先、旅先で本を自由に読めるのは嬉しいですね。

面白かった本はこちらから。 https://flyingfast1.wordpress.com/books/

夢が叶う瞬間

本日2016年7月7日、宇宙飛行士の大西卓哉さんがカザフスタンのバイコヌールからISSに向けて出発されました。私もライブで見ていました。できれば星の街へ行って打ち上げを生で見たかったのですが訓練中ですのでyoutubeで。

ロケットの打ち上げの瞬間はいつ見ても感動的です。そこに乗っている人達の夢が叶う瞬間を見れるからです。見事に軌道に乗った時の大西さんの笑顔が印象的でした。「夢を叶えたんだなー」と思うと鳥肌でした。

いまこうしている間も大西さんを乗せたソユーズは宇宙を飛んでいる、と考えただけでワクワクします。そこからの景色は行った人にしか分からない格別の景色のはずです。

それまでの訓練は相当なプレッシャーだったと思います。下記の動画にあるように、訓練で一番辛かったのはシステムの勉強だったと答えてらっしゃいます。私も旅客機の勉強をしていてシステムの勉強ほど奥が深くて難しいものは無いと感じます。

まして、歴史に磨かれたソユーズのロシア語マニュアルとなるとそれはもう大変なはずです。それらをレジリエンスで乗り越えてたどり着く極致は最高の達成感だと思います。

私も一意専心、訓練を頑張ろうと気持ちを新たにした一日でした!

大西さん、頑張ってください!

Hydroplaningとタイヤ圧

「ハイドロプレーニングって何でタイヤ圧の式なの?」

と教官に言われ、「確かにそうですね」という訳の分からない答えを返してしまいました。

ざっくり言えば下の図のような原理だそう。水がタイヤとRWYの間に入って排水出来なくなると起こるようです。

Hydroplaning

じゃあタイヤ圧をむちゃくちゃ上げればいいかと言えばそういう訳でもなく、
・圧が高すぎるとタイヤの接地面積が小さすぎてRWY or タイヤの強度的に無理
・快適性が著しく低下する

等の懸念材料があるということでした。

まあグルービングさえあれば水たまりはできないから大丈夫とのこと。

勉強になりました。

待機速度一覧 航空機区分 C,D

Autopilotで飛んでいるとHOLDINGのエントリー方法でさえもAutoで判断してくれます。
さらにHOLDING Speedもその時の重量や形態に合わせて最適な速度を自動で計算してくれます。
しかし、そのHOLDING Speedは公示されているスピードとは限りません。
自分で速度超過をしていないか判断して入力する必要があります。

◆◆
航空機の区分は (AIM641)
最大離陸重量での
・着陸形態における失速速度 Vsoの1.3倍
・失速速度Vs1gの1.23倍
のいずれか大きい速度で航空機の型式毎に設計上定まるものです。

この速度ごとに航空機区分が決まるのですが

航空機区分
C 121kt以上141kt未満
D 141kt以上166kt未満
となっており、日本の旅客機の殆どはこの2つとなっているのでそれらについて表にしました。

もともとAIM574やRoute manual Basicにも載っているものを切り出したものです。
待機速度3種

これをアンチョコに挟んでおいて、HOLD AS PUBLISHEDと言われたらCDUに入力して計算させた結果と見比べるようにします。

Autopilotのモニター

ジェット機の操縦というと

・操縦の入力に対して反応がゆっくりだから難しい

・システムが複雑

・オートだから楽

という様なイメージを持っていましたが実際に当たってるのは上二つで

オートパイロットを入れたところで、そのモニターには結構神経を使うなーという感想です。
確かに、人間にとって一番難しいと言われる等速直線飛行なんかやらせれば一級品です。何時間飛んでも10ftもずらさないでしょう。

しかし、上昇・降下となるとパイロットが神経を使って監視する必要があります。
例えばオートパイロットに何を守らせるのか。
Path、スピード、降下率
色々ありますが、厄介なのはスピードです。
航空法82条の2、及び施行規則179条にあるように空中には多くの速度制限があります。
法律ですからオーバーする訳にはいきません。
しかし、オートパイロットへの入力次第では速度制限よりもPath(経路)を守ることの方を優先してしまう場合があります。

具体的には、降下経路を守るモードで飛んでいて、降下と共に背風になったとします。
すると経路を守るためにオートパイロットはどんどん機種を下げて行こうとします。
すると10000ft以下での速度制限250Ktをオーバーしてしまいそうになります。

よって、巡航中も含めてオートパイロットのモニターにはかなり気を使います。
操縦の入力に対して反応がゆっくりだから難しくてシステムが複雑でオートだからこその難しさがある、
のがジェット機だと思います。

それでも4万ftの景色やRVSMでの正面からの航空機との交差の迫力は初期訓練では見れなかった景色なので幸せだなと思います。

また、オートパイロットの使い方の幅は風や天候によってかなり変わってくるのでPFの性格とセンスが出ていて
オブザーブをさせていただく度に新しい発見があります。

◆◆
逆にオートパイロットは賢いなーと思うのは例えば巡航から降下の時、10000ft手前で巡航速度からしっかり250Kt以下に減速し始めます。
第5管制業務処理規定管制方式基準)の
(Ⅱ)-1-7 にあるように

注 10,000 フィート以下への降下を指定したとき、操縦士は、法第 82 条の2に規定
された制限速度へ減速するため、10,000 フィート付近で一時的に水平飛行(level
off)を行う場合がある。

の条項をしっかり行ってその減速分も考慮してETAを計算してくれるあたりは本当に優秀だなと思います。
あとは風のデータさえさらに細かく自動でアップリンクできれば相当いい精度のETAが算出できそうです。

◆◆
余談ですが、航空法の本のラベル、同期の多くがこんな感じで数十条ごとに貼っているので参考にしてみて下さい。

条文等、どこに何が書かれているのか理解しておくことはパイロットにとってとても重要です。
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