FARとCFRの違い

国際線のパイロットをやっていると必ず出てくる言葉。

CFR。

要するに航空法のことでしょ?

と思っていたのですが、航空法ってFAR(Federal Aviation Regulations)ですからどういう関係か気になってたのでサクッと調べた結果を記しておきます。

結論から書くと、概念としては両方同じものを指しているのですが単にCFRと言った場合は、CFRの方が大きな枠組みです。

まず、CFRとは何か。CFRとはWikiによりますと、

(the Code of Federal Regulations、略称:CFR)とは、アメリカ合衆国の連邦政府により連邦官報の中で公布される、一般的かつ永続的な規則・規定を集成した法典である。

なるほど。日本でいうところの法律全般を指してるんですね。

ですのでそこには民法やら刑法、会計法などなど色々あります。(以下のリスト。)

List of CFR titles

Code of Federal Regulations, seen at the Mid-Manhattan Library. Editions of Title 3, on the President, are kept on archive. Notice that for the first year of each new presidency, the volume is thicker.

The CFR is divided into 50 titles that represent broad subject areas:[2]

・・・Title50まである「連邦規則集」

その中の14番目が航空法なのでCode 14などと言われるようです。

The Federal Aviation Regulations (FARs) are rules prescribed by the Federal Aviation Administration (FAA) governing all aviation activities in the United States. The FARs are part of Title 14 of the Code of Federal Regulations (CFR). A wide variety of activities are regulated, such as aircraft design and maintenance, typical airline flights, pilot training activities, hot-air ballooninglighter-than-air aircraft, man-made structure heights, obstruction lighting and marking, model rocket launches, model aircraft operations, Unmanned Aircraft Systems (UAS) and kite flying. The rules are designed to promote safe aviation, protecting pilots, flight attendants, passengers and the general public from unnecessary risk.

これを読むと、FARsとpart of Title 14は同じ航空法を指してるんですね。耐空性やら色々あるようですね。

でもわざわざFARのことをCFRって言うの、なんかめんどくさくないですか?もうFARでいいような気が。

「各種規則の14番目の規則」なんて呼び方、面倒臭いので「航空規則」でいいじゃん。と。

ん?FARs?「s」ってなんだ。

ここで全容が見えてきました。

FARsでググれば出てきたこの言葉

Since 1958, these rules have typically been referred to as “FARs”, short for Federal Aviation Regulations. However, another set of regulations (Title 48) is titled “Federal Acquisitions Regulations”, and this has led to confusion with the use of the acronym “FAR”. Therefore, the FAA began to refer to specific regulations by the term “14 CFR part XX”.

FARsと呼ばれる航空法はFARで呼ばれる調達法と表記が誤認しやすいのでCFRと呼ぶようになった。

そんな単純な理由なんですね。やっと全体図が見えました。

◆◆

世界中、どの国に行ってもパイロットとして暗記必須はATCとEmergencyの項目です。

なのでそのあたりをまずマニュアルで探すのですが、北米だと「CFRの第◯◯項の(a)に従う」といった内容になっているのでCFRのHPはよく参照します。”Browse Parts“と書かれた数字のところをクリックして、マニュアルに載ってる「第◯◯項」の所を読んでみましょう。ちょっと日本と違うところが沢山あります。

これから国際線に出る方の参考に少しでもなれば幸いです。

更新します。

最近昇格された女性FOの読者からご指摘があったので色々雑記で更新したいと思います。

いつもコンスタントに見てくださってる方々、ありがとうございます。

おそらく訓練中の方が殆どかと思います。カリフォルニアやオーストラリアからもアクセスありがとうございます。

昇格したら素晴らしい世界が待っているので是非頑張って下さい。

空の旅を科学する

空の旅を科学する
人工知能がひらく!? 21世紀の「航空管制」

今年読んだ航空関係の本の中で最も良かった本です。やや専門的であるからこその面白さがあり、航空関係の方々、特にパイロットや管制官の方であればスッと入ってくる内容でした。 
NASAエイムズ研究所で始まった航空管制科学。それに従事する日本で数少ないENRIの科学者の1人、伊藤恵理さんの著書。

航空管制の歴史を紐解く本でありながら、著者の伊藤さんの自叙伝でもあり、これまでの研究者としてのキャリアを臨場感ある描写で追体験できます。

科学者としての根性とプライドを感じる行動力に読みながら「カッコイイ!」と感化されました。

伊藤さんの世界中を飛び回った10年間を読んで私自身もモチベーションを頂き、さらに運航の品質の高いパイロットにならないとと気持ちを新たにいたしました。
航空業界の方、あるいは目指されてる方、少しでも航空業界に興味がある方は絶対に読むべき1冊です。

私は航空業界の未来を考えるには航空管制の青写真を見るのが有効だと考えています。
パイロットの視点では、「1人運航が始まったらパイロットという職業はどうなるのだろう」というミクロな視点で航空業界の未来を考えてしまいがちです。
しかしこの本を読んで視野が大きく広がりました。
伊藤さんもおっしゃる通りパイロット不在の旅客機に乗りたいという人は少ないと思います。私もこれには同感です。
だからといって無人やワンマン運航に反対と言うのではなく、安全、効率的な空の旅を提供するのにベストな方法をパイロットも模索・協力すべきだなと思えました。

先日発表があった管制をメッセージによるやりとりに置き換えるDATA COMM
これに加えて世界の一部地域では既に搭載義務のあるADS-Bの普及後の航空管制を見ればその先の2030年頃の航空機の仕様も見えてくるのではないでしょうか。
それが1人乗りなのか、2人乗りなのかは実験的な導入の結果次第なのかも知れませんが、どういう時流になろうともそれに乗って『自動車が発明された頃の馬車屋』の様な新技術を批判するパイロットではなくASASやFIMを使いこなせる柔軟なパイロットになっていたいなと思いました。

そしてアメリカの空では始まっているBest Equiped Best Serve(コストをかけて新しい器材を導入しているエアラインには短縮経路へのベクターなどの優遇制度)や、既にあるRNAVの導入であるPBNの様なPBOに基づいたTMA-TMの事を鑑みると、日本のエアラインもそれらに即時対応できるエアラインであるべきだとも思えたのも本書を読んだからです。

専門用語は多いですが丁寧に説明してあるので本書を読めば全てクリアになると思います。

日本の空はアメリカの空の追従になっているのは卑近な例で言えばWIFIの導入やEFBの導入を見ても明らかです。
伊藤さんも日本の航空管制科学の遅れは指摘しています。
しかし最近では2015年からJALの施設を使った管制のシミュレーションも出来るようになって来ており、これからのアジアの新たな管制を日本から創りあげられたらいいなと思いました。
先ほど述べたように私は航空管制の制度に合わせて航空機は進化して行くだろうなと感じています。
B777には無くてB787にはあるFMCへのFPA(Flight Path Angle)の入力も等角度の降下をベースとした管制への布石とも取れます。
爆発的に増えるアジアの管制に対応するためは超効率的な管制が必要です。

それが世界のスタンダードになれば、その超効率的な管制に対応した航空機が作られることとなります。
必要は発明の母なので、間違いなくイノベーションはアジアから起こるでしょう。

これから最も混雑するであろうアジアの管制から目が離せません。そこに航空業界の未来があると思います。

航空関係の本は相当読んでいる方だ思いますがこんなにメモを取りながら読んだ本は他にありません。

是非皆様読まれて見てください。

航空業界の未来にワクワクしますし、伊藤さんのファンになると思います。

本の中で良かった言葉を幾つかご紹介します。

電子書籍なので本文の%表示で。
□心に決めた3ヶ条(14.2%)

①独創的であれ

甘柿コースの駄目サイクル(=身内で褒め合うダサイクル)に入らないこと。

②説得力を持て

 1.科学的思考法→常識を疑う

 2.プレゼン能力

 3.英語(公用語として)

③人間を理解せよ

人間とコンピュータが仲良く共存する鍵は人間にあり。

□アイトラッキングしても全ての視覚情報を得られるとは限らない。(27.5%)

私がいつか教官になったらクロスチェック(適正な時期に適正な計器を見ること)を指導するのにアイトラッキングをしたいと思っていたので膝を打つ言葉でした。意外と間接視野で地平線を見てたりするもんですから。私の考えは机上の空論かもしれないなと思わせてくれました。
□目の前の出来事に意味づけするのは受け手になる人間の想像力(32.9%)

本当にその通り。ラッキーな人がいるのではなく自分ってラッキーだな、と思える人がいるだけ。ポジティブに生きたいものです。

□世界で1番深い谷を探すには旅の出発点は世界中にランダムにばらまいた方がいい。(遺伝子的アルゴリズム)日本にも航空の種を蒔くべきだ。byウィル(62.5%)

独占ではなく新技術は世界に発信。身近な事柄で言えば新しい知識や経験は他のパイロットともどんどん共有していきたいなと思いました。

13.ピア・エフェクト

受験記を更新しました。

13.ピア・エフェクト

2年分の受験記を書いてみて振り返ると色々悩んだり考えていたなと思いました。
今回の13話で終了です。

長々となりましたが、お読みいただいた方々ありがとうございます。

情報の探し方

Twitterで数件「どのように情報収集をしていますか。」というメッセージをいただきます。

主に使ってるのは

・Googleアラート

・feedly

・Byline

ですが、ネット上の情報は瑣末な内容が多いのでやはり書籍の信頼性は高いです。
そこで、ネットでも唯一信頼に足る情報の検索の仕方ですが

『◯◯_go.jp』

と検索します。

◯◯(←検索したいもの)+スペース+go.jp
これにより政府が発行している資料が出てきます。

例えば、『パイロット go.jp』で探すと。

クリックして001019364.pdfにアクセス

平成25年の日本におけるパイロット事情の正確な情報が見れます。

もし「今後のパイロットはどうなるのだろう」と思ってもネットには載ってません。未来の事など誰にもわかりませんから。

そこで、こういう事は自分のアタマで考えるのが1番大事な作業になってくるのですが、その思考材料が正しくないと間違った答えが出てきますよね。

そういう時は是非政府の非営利の情報、特に統計などを利用してみてはいかがでしょうか。

◆◆

もちろん、この記事の内容が正しいのかどうかも自分でやってみなければ分かりません。
試しに◯◯_go.jpでググってみてください。

10.ポールポジション/11.再会

筆記試験への挑戦と結果の受験記

10〜13話(予定)まで一括でマガジンでもご覧いただけます。

ひとまとめでも、1話ずつ興味あるモノだけでも、読んでいただければ幸いです。

13話迄で完結の予定です。反響があれば続きを書きたいと思います。

7.夢に期限を

NKJ56_taketomishimanoumitosora_TP_V

グアムでの決意から進路の取捨選択まで。

久々に時間が出来たので7.と8.を連続で書きたいと思います。

こちらから⇒夢に期限を

耐空性審査要領 T類 目次

 

耐空性審査要領目次

耐空性審査要領目次付録

 

個人的に耐空性審査要領のコピーでない目次が欲しかったので作ってみました。
口述審査の参考に。

Amazon Kindle unlimited

月額980円でAmazonのKindleで書籍が読み放題になりました。

KU-logo-LP._CB285035605_

Amazon Unlimited
以前からアメリカをはじめ諸外国にはあったサービスなので待ちに待った、という感じです。
書籍が大好きな私は本に月1万円以上はかけているのでこれは本当にありがたいです。
今は約12万冊ですがまだまだ増えるでしょう。Unliitedで読める書籍に限りがあるので
これからも通常の書籍と並行して読んでいきたいと思います。

仕事先、旅先で本を自由に読めるのは嬉しいですね。

面白かった本はこちらから。 https://flyingfast1.wordpress.com/books/

夢が叶う瞬間

本日2016年7月7日、宇宙飛行士の大西卓哉さんがカザフスタンのバイコヌールからISSに向けて出発されました。私もライブで見ていました。できれば星の街へ行って打ち上げを生で見たかったのですが訓練中ですのでyoutubeで。

ロケットの打ち上げの瞬間はいつ見ても感動的です。そこに乗っている人達の夢が叶う瞬間を見れるからです。見事に軌道に乗った時の大西さんの笑顔が印象的でした。「夢を叶えたんだなー」と思うと鳥肌でした。

いまこうしている間も大西さんを乗せたソユーズは宇宙を飛んでいる、と考えただけでワクワクします。そこからの景色は行った人にしか分からない格別の景色のはずです。

それまでの訓練は相当なプレッシャーだったと思います。下記の動画にあるように、訓練で一番辛かったのはシステムの勉強だったと答えてらっしゃいます。私も旅客機の勉強をしていてシステムの勉強ほど奥が深くて難しいものは無いと感じます。

まして、歴史に磨かれたソユーズのロシア語マニュアルとなるとそれはもう大変なはずです。それらをレジリエンスで乗り越えてたどり着く極致は最高の達成感だと思います。

私も一意専心、訓練を頑張ろうと気持ちを新たにした一日でした!

大西さん、頑張ってください!