FARとCFRの違い

国際線のパイロットをやっていると必ず出てくる言葉。

CFR。

要するに航空法のことでしょ?

と思っていたのですが、航空法ってFAR(Federal Aviation Regulations)ですからどういう関係か気になってたのでサクッと調べた結果を記しておきます。

結論から書くと、概念としては両方同じものを指しているのですが単にCFRと言った場合は、CFRの方が大きな枠組みです。

まず、CFRとは何か。CFRとはWikiによりますと、

(the Code of Federal Regulations、略称:CFR)とは、アメリカ合衆国の連邦政府により連邦官報の中で公布される、一般的かつ永続的な規則・規定を集成した法典である。

なるほど。日本でいうところの法律全般を指してるんですね。

ですのでそこには民法やら刑法、会計法などなど色々あります。(以下のリスト。)

List of CFR titles

Code of Federal Regulations, seen at the Mid-Manhattan Library. Editions of Title 3, on the President, are kept on archive. Notice that for the first year of each new presidency, the volume is thicker.

The CFR is divided into 50 titles that represent broad subject areas:[2]

・・・Title50まである「連邦規則集」

その中の14番目が航空法なのでCode 14などと言われるようです。

The Federal Aviation Regulations (FARs) are rules prescribed by the Federal Aviation Administration (FAA) governing all aviation activities in the United States. The FARs are part of Title 14 of the Code of Federal Regulations (CFR). A wide variety of activities are regulated, such as aircraft design and maintenance, typical airline flights, pilot training activities, hot-air ballooninglighter-than-air aircraft, man-made structure heights, obstruction lighting and marking, model rocket launches, model aircraft operations, Unmanned Aircraft Systems (UAS) and kite flying. The rules are designed to promote safe aviation, protecting pilots, flight attendants, passengers and the general public from unnecessary risk.

これを読むと、FARsとpart of Title 14は同じ航空法を指してるんですね。耐空性やら色々あるようですね。

でもわざわざFARのことをCFRって言うの、なんかめんどくさくないですか?もうFARでいいような気が。

「各種規則の14番目の規則」なんて呼び方、面倒臭いので「航空規則」でいいじゃん。と。

ん?FARs?「s」ってなんだ。

ここで全容が見えてきました。

FARsでググれば出てきたこの言葉

Since 1958, these rules have typically been referred to as “FARs”, short for Federal Aviation Regulations. However, another set of regulations (Title 48) is titled “Federal Acquisitions Regulations”, and this has led to confusion with the use of the acronym “FAR”. Therefore, the FAA began to refer to specific regulations by the term “14 CFR part XX”.

FARsと呼ばれる航空法はFARで呼ばれる調達法と表記が誤認しやすいのでCFRと呼ぶようになった。

そんな単純な理由なんですね。やっと全体図が見えました。

◆◆

世界中、どの国に行ってもパイロットとして暗記必須はATCとEmergencyの項目です。

なのでそのあたりをまずマニュアルで探すのですが、北米だと「CFRの第◯◯項の(a)に従う」といった内容になっているのでCFRのHPはよく参照します。”Browse Parts“と書かれた数字のところをクリックして、マニュアルに載ってる「第◯◯項」の所を読んでみましょう。ちょっと日本と違うところが沢山あります。

これから国際線に出る方の参考に少しでもなれば幸いです。

ゴッドハンドを見つけた話

ここ最近腰痛に悩ませれておりました。職業病です。

14時間も座る仕事をしていれば当然のことで、パイロットの中にはヘルニアの手術をされた先輩も数多くいます。

予防措置は「座らないこと」

という我々には不可能な方法しかないので、どうしようかと色んな人に不調を訴えていたら、ゴッドハンドを紹介されました。

それがココ。戸越公園の「整骨院ラポール」さんです。

技術は確かで、僕の傷んでいた背中から腰にかけての歪んだ箇所を、ものの見事に1回で治して3回目には全快していました。

院長の川畑先生のゴッドハンドぶりは、施術後すぐに体感出来ますが、それだけではなく、そのご経歴やご経験からくるお話がまた面白く、普通に飲みに行って色々お伺いしたいくらい素晴らしい人柄です。

ここに行き着くまでにクーポン遊牧民で6件ほど都内の整骨院に行きましたがなかなか満足いくところまで行けなかったので久々に嬉しい出会いでした。

今腰痛や体のコリなどでお困りの方がいらっしゃれば是非一度行ってみて下さい。私が身銭と足で稼いだ一次情報ですので間違いなくおすすめ出来る整骨院です。

ジェット気流と揺れの関係

久しぶりの投稿です。
ジェット機になってもフライトの基本的な準備は変わりません。

まずは気象を確認する所から。

訓練生時代はあまり意味のなかった日本全体の気圧配置ですが、エアラインでは1日で北海道から沖縄まで移動することもあるので、ASASなどで全体図を把握することが大事です。

METAR, TAF, SIGMETさえあれば、普通に運航出来ますが、それでは3流パイロットと呼ばれてしまいます。

お客様をお連れする以上、よく分かってないところに連れて行くのはおかしな話ですので。

◇◇
今日はその中でも最も重要になってくるジェット気流の話です。
国際運航となると細分化してハドレー循環フェレル循環など細かい理解が必要で、その度に視野が広くなるのですが、その話はまた今度するとして、今回は僕なりのジェット気流(Jp:Polar)の扱い方を考察します。

◇◇
かつてこんなキャプテンがいたそうです。

グレートキャプテンから見てグレートキャプテンの人なので今は80歳くらいでしょうか。
出社すると、「今日のジェット気流の場所と高度言え」

とだけ言うそうです。副操縦士が回答伝えると、

「じゃあFL280でファイルしとけ」と。

ジェット気流の位置だけで揺れや、その他諸々把握してあとは特に何も見ずに飛ぶという神がかり的な飛び方をされていたそうです。今では考えられませんが。

ここでパイロット愛読の書、AIMjの882を参照してみます。

図は右が南、左が北です。

CAT(Clear Air Turbulence)はパイロットとしては避けるべき事象です。
普通は無いですが、severe turbulenceともなると操縦性能にも影響が出ますので。

この図はかなり重要です。南北にDeviationする際、今日のJet軸の場所と高度をパイロットは毎回頭に叩き込んでおり、
「Jet軸を超えて北に行く時」は、かなり気を使います。
基本的にはJet軸の上に行くのが良いですが、重重量だと高高度に上がれないのでJet軸の下に行かなければなりません。

すると選択肢はざっくり言うと

・南に避ける

・ベルトサインを点けて北に行く

・降下する

の3つになります。
ここでAIMjの854を参照してみます。

ここで先ほどの選択肢を見てみますと、

・南に避ける
⇒Jetの南には低気圧が発生しやすく昼間ならHigh cloudが発生していて被雷の可能性あり。
CATエリアと低気圧性の積雲との安全性、快適性を天秤にかけることになる。

・ベルトサインを点けて北に行く
⇒短い路線ではサービスの中断になる可能性。揺れると分かっている所にわざわざ入っていくという判断はいかがなものか。
Bestな選択肢で無い可能性がある。

・降下する
⇒高高度の方が燃費がいい。長い路線の場合、低高度を長時間飛ぶと燃料が足りなくなる可能性あり。
AIMj854に記載の通り、CATのエリアは2000ft程度の厚さだから4000ft下げれば行けるのか。それは行ってみないと分からない。何分低高度を飛べばどれくらいの燃料消費になるか。予め計算結果をプリントして持っておこうかな。

というようなことを考えて飛んでいます。
勿論、実際はもっと複雑な要件が入っていますので、とてもじゃないですが条件を場合分けすることはできません。

温位が視覚的に見えるセンサーがあれば話は全く別ですが。

◇◇

訓練生時代にはあまり分からなかった気象も、実運航と重ねてAIMjなんかを読み返すととても勉強になります。
久々にAIMjを開いてみるのはいかがでしょう。
その時の自分のレベルに見合った再発見があるはずです。

◇◇
当サイトflyingfastでは、ブログに加えて

ツイッター:@flyingfast1
note:https://note.mu/contrail

での運用を行っています。どうぞご覧ください。

更新します。

最近昇格された女性FOの読者からご指摘があったので色々雑記で更新したいと思います。

いつもコンスタントに見てくださってる方々、ありがとうございます。

おそらく訓練中の方が殆どかと思います。カリフォルニアやオーストラリアからもアクセスありがとうございます。

昇格したら素晴らしい世界が待っているので是非頑張って下さい。

英語のパーソナルトレーニングジム


今も昔もパイロットに必要な能力の一つに英語があります。

ツイッターにいらっしゃる外資系のパイロットの方々も異口同音に仰るように、ATCはもちろん最低限出来なければいけないのは言うまでもないのですが、グローバルスタンダードな教養として必要だと思います。

私も海外旅行が趣味です。
その目的は大抵、外資系の方のお話を聞いて日本との違いや世界のエアライン事情の情報交換をすることです。
私は日本に住んでいたいので、移籍する気などは全く無いのですが、共通の専門分野がある人と海外で遊ぶことは、見分を広げる大きなチャンスなのでよく海外に旅行に行きます。
そういった際、会話も表現の幅が限られると相手がNativeであるほど、こちらのリスニング力、表現力次第ではコミュニケーションの質が大きく変わるので底上げをしたいなーと思っていました。

丁度そんな時、BCG(外資系大手コンサルティング会社)の友人が友達を紹介したいからという事で
「英語のパーソナルトレーニングジム」を紹介されました。

元々、私は英会話には力を入れていたので大学1年生の時にSTEP BULATSでB2レベルもとれたしまあ苦労してないしいいかな、とは思っていたものの「実は自分の英語は拙い表現と日本人ぽい発音である」という弱点はハッキリ認識していたので
これはいい機会だなと思ってご紹介を受けました。

体験してみてすぐに入会を決めました。
私の決めた理由は大きく2つあって
1.経営者の人柄
2.レッスンの内容
でした。

尊敬する友人の紹介だけあって経営をなさっているお二方も、英語がネイティブなのは当たり前ですが
それ以上にいい雰囲気と無駄のない商品説明に素敵だなと思いました。
良い人の周りには良い人が集まる、というのが私の経験則なのでこのお二人が採用した講師陣なら間違いないだろうと考えました。

またレッスンの内容も①英語の音、②リズム、③考えを英語にする力を、対面レッスンとオンラインレッスンの組み合わせで、毎日、徹底して身体に覚え込ませるというアプローチで、短期間で効果が出るようになっています。毎日自分の声を録音して送るたった5分ほどですが小さな積み重ねは大きな成果になるなと思いました。

仕事で浜松町の教室に通えない時はSkypeでのリモートレッスンも可能です。

実際1週間でも初日の録音と聞き比べると効果は覿面です。

価格も他の1対1の英会話のに比べると大変リーズナブルです。

三井物産、BCG出身の人が作った会社が提供しているプログラムなので、安心感もあると思います。
同社の体験レッスン登録用リンクとFacebookページリンクを下にあるのでコンタクトしてみて下さい。」

体験レッスン
FB

5月からは「英語思考のマテリアル教材」刷新され、さらに内容が濃くなるそうなのですが、今回このブログから経由で申し込まれた方はその新教材が無料となる特典をつけてくれるそうなので是非体験レッスンだけでも受けてみてはいかがでしょうか。

なお、これは頼まれて書いている記事ではないので私には特に何も無いのですが、個人的にこの出来たばかりの英会話ジムを応援したいと思い記事にしました。

英語の発音、必ず変わります。英語はパイロットにとって道具であり武器であり教養です。

横風離陸時のエルロンラダーコントロール

このブログのツイッター@flyingfast1では「#フライトメモ」のハッシュタグでフライト中に学んだことをシェアしています。
雑記をスキップしてフライト関係の知識だけ参照したい際はこのハッシュタグで検索してください。
訓練生や現役パイロット、また航空ファンの方々の参考になればと思います。
また、アドバイス等あれば是非@flyingfast1までDMかツイートしていただければなるべく早めに返信いたします。

今回は離陸時のエルロンとラダーの使い方に関して。

◆◆小型機◆◆
1.横風離陸滑走中
・エルロンについて
始めにエルロンをフルに入れておいて速度がついてきて空力が効いてきたら段々エルロンを緩めていく。

・ラダーについて
空力が効いてくると風見効果も大きくなるので、それを打ち消すために徐々に必要になってくる。

2.離陸してから
・エルロンについて
水平維持。

・ラダーについて
足を固める

という風に習った方が多いと思います。
後退翼の大きいジェットではそれは少し異なって

◆◆旅客機◆◆

1.横風離陸滑走中
・エルロンについて
段々左右差が大きくなっていくので徐々にエルロンを入れていく。←これが大きな違い
・ラダーについて
空力が効いてくると風見効果も大きくなるので、それを打ち消すために徐々に必要になってくる。
2.離陸してから
・エルロンについて
そもそも後退翼の効果で風上の揚力の方が大きいのに加えて、AoA(Angle of attack)が大きくなるにつれて風上と風下の揚力の左右差がさらに大きくなる。(下の図を参照)よってエアボーンと同時に地上滑走に必要だったエルロン量よりさらに必要。←これが大きな違い

・ラダーについて
始めは固める、エルロンとコーディネーションをとりながら徐々にゆるめる。WCAが決まった時にちょうどニュートラルになる。

img_3356.png

 

こういった理論を操縦に反映させる行動によって技量というのは磨かれていきます。

体に染み付いて考えなくても出来るようになればしめたものです。私はまだまだなのでイメージトレーニングで頑張ります。

先行機と後続機の時間間隔と距離の関係

実機でのフライトをしているとシミュレータとは圧倒的に異なることがあります。

それは他機がいること。

他機のおかげでHDG指示からのベクターは来るわ、減速指示も来るわ、イメージフライトでは予想できないことが数多く起こります。

全ては飛行機同士の管制間隔に起因するのですが実際、管制官はどれ位の間隔を取っているのでしょうか。

管制官の見ているレーダー間隔に関して、AIMjを参考に考えると455,512辺りが参考になります。

その辺りに関して、空の大先輩である翼友の著者でもある小嶋さんに質問してみました。

◆◆
私の質問は以下の通り。

・国内ACCの中における飛行機の縦の(前後の)セパレーションは何マイルになってるのでしょうか。
ACC→ACCハンドオフ時は縦間隔15マイルとなっているのですがRNAV5運航はレーダー覆域内のためレーダーサイトから40NM未満/以遠での間隔、3NM/5NMが適用されることになると考えていました。
翼友も同じように書いてあり、納得していました。

ただ、実際の運航でエンルートにおいて縦間隔5NMということは無いような気がします。
同期に聞いても「5NMは流石に近すぎるでしょ」ということだったのですが確信には至りませんでした。

そこで私の考えではRNAVのエンルートに関しては「レーダー監視」のもとRNAV5の経路を自己監視でPBN運航しているのであって「レーダー管制」されてる訳ではない。したがって通常の10分20NMか、少なくてもACC間ハンドオフ時の15NMのセパレーションを取っている気がするのですがいかがでしょうか。
HDGをふられたりして、ベクターが始まってからが『レーダー管制』になり、3NM/5NMが適用になると考えます。
参考:AIMj 455,512

もし何かご存知でしたら教えて頂ければ幸いです。

◆◆
すると小嶋さんからは何とも丁寧なご返信をいただき、大変参考になったのでシェアさせて頂きたいと思います。
◆◆

日々、飛ばれている事から釈迦に説法かもしれませんが。。。

 エンルート飛行中のレーダー管制間隔についてご質問頂いたと思います。
 レーダー管制間隔は、管制方式基準Ⅳ-6-2の通り、レーダーサイトからの距離によって、
3nmまたは5nmが最小間隔となっています。
 また、離着陸においては、後方乱気流管制間隔が適用されています。
 一方、エンルートも、確かにレーダーサービスを受けながらの飛行ではありますが、最小10nm、通常15~20nmの距離をもって飛行してい ると思います。

 この理由は、管制官は管制間隔として概ね2min(Heavy Medium間の時間間隔)を標準として間隔を確保しています。
 例えば、FL300をM.74でGS420ktで飛行しているとしましょう。
 この場合、飛行機は1minで420÷6=7nm つまり2minで14nm必要となりますから、これ以上、先行する機体との距離が詰まるようであれば、後ろ側の航空機に減速の指示が来るかもしれません。

 またAPCHエリア飛行中として、12000ftを240KIAS(GS300kt)で飛行しているとしましょう。
 この場合、2minで進む距離は10nmですから、これ以上詰まる事があると、自分で考えて減速しなければ、先行機と詰まってしまう事になります。

 逆に言うと、「先行機との距離×30」が2min間隔の場合の適切なGSという事になります。
 私は、先行機との距離に応じて、この計算式を応用しながら間隔を詰めるべきか、それとも減速しておくべきか考えて運航しています。
 管制官から言われる前に、自分で間隔調整しておくと、余計な速度調整を受けなくて済みます。

 参考に2015のATSシンポジウムの資料をお送りします。
 これの33ページに間隔の絵がかいてあり、私も、この程度と把握しています。

 また、お会いできるのを楽しみにしています(^^)
 お互い、フライトを楽しみましょう!

◆◆

ということでした。感覚的にENRにおいて15NMくらいは空いてるよなー、と思っていたことの理由が明確に分かりました。

以来、ナビゲーションディスプレイに映っているTCASの表示から先行機との距離×30のGSを守るようにすると速度の指示が少なくなりました。また、指示が来るタイミングも大体予期出来るようになったのでとてもありがたかったです。是非使ってみて下さい。

また、2015年に行われた、一般財団法人 航空交通管制協会の【第37回ATSシンポジウム】の資料も大変参考になるのでご一読してみて下さい。

 

ライン運航で指摘されるAIM-Jの頁

日本人パイロットなら誰しも訓練生時代から大変お世話になるAIM-J

あくまで位置づけは「雑誌」なのですが、国交省監修ということで参照にはよく読むように諸先輩方から指導を頂きます。もちろん会社の規定であるOMの方がより制限が厳しく基本的にはOM優先ですが一般事項として大変有用です。

 

◇ライン運航でも初めの頃によく読み直せと言われるページをいくつか列挙します。

・277 受信証と応答/リードバック
何をリードバックすべきであるか。通信量は最小に、でも要点は漏らさずにが基本です。
東京ACCなんかはとても忙しいのでフルリードバックは逆に丁寧を通り越して過剰です。
復唱のポイントは、指示に対して現在進行形で答えるのがICAOで推奨されているということです。
e.g.Reduce speed to 220kts→Reducing 220kts
詳しくは各社のルートマニュアルを参照。

 

・455 上昇中のアルティメタセッティング
初期訓練では馴染みのないQNE(29.92にセットすること)ですがライン運航では基本的に毎回使います。
基本的には各社の飛行機取扱いマニュアルに書いてある通りなのですが、AIM-Jでは14,000ftに近づいた時、もしくは14,000ftを通過する時となっています。
ただし、実際は低気圧の中を上昇中、FL150 belowのrestrictionがあれば早めにQNEにしなければQNHからQNEにしたときにはFL150をoverしてしまってることにもなりかねません。300ft以上の逸脱は違反なので注意です。

 

・564 降下中のアルティメタセッティング
AIM-Jには「本来はQNHに合わせたときに14,000ftになるタイミングでセットする」と書かれていますがこれも各社の規定次第です。降下中は比較的通過時にQNHにされてる方が多いと思います。

 

・1011 航行の安全を確保するための装置
a,計器飛行を行う場合
b,管制区、管制圏、情報圏、試験空域を航行する場合
c,航空運送事業の要に供する場合
d,航空運送事業以外
e,特別な方式(RVSM、CAT II/IIIa,b、RNAV)による航行を行う場合。
これらのうち、aに関しては計器飛行証明の口述でがっつり聞かれるので暗唱した覚えがありますがcに関してILSやWX RADARはあまりなじみが無かったので勉強しなおそうと思いました。航空法施行規則147条を再確認です。

また、航空法を見ると147条に続いて149条(AIM-Jの1012にもあるように)航空機の運航の状況を記録するための装置もエアライン特有なので要確認です。

さらに、医薬品も搭載義務があります。(施行規則150条2項)

 

◇◇

初期訓練以来のAIM-Jの開きっぷりですが、いつ見ても目新しい内容が載っているので胡坐をかかず逐次情報はアップデートしていかなければと思うばかりです。

横風の暗算は『良いクックは婿さんに』

冬のこの時期、西高東低の気圧配置は強まると強風が吹きます。

ハンガーに当たった風(ハンガーウェーブ)にさらされながらの離着陸は大きく揺れるためストレスが大きいです。クロスウィンドリミットもギリギリの時が多く運航規程オーバーしないようにタワーから通報された風を素早く計算するのはコーパイの仕事。

また、冬場の北日本はRWYもSNOWコンディションですので横風の制限値が下がったり。

そんな時暗算で横風を計算する便利な言葉「良いクックは婿さんに」

1 いー

9 くっ

9 く

8 は

6 む

5 こ

3 さん

2 に

ということです。

これは10°から80°方向までこれを掛けるとヘッド成分とクロス成分の風が一発で出るゴロです。

見方はこんな風に並べ替えます。『良い』は『いー』と読み替えて『1.0』の意味です。

———→————→—–

Head 1.0 .9 .9 .8

Cross .2   .3 .5 .6

———←————←—–

頭の中でこの羅列をイメージします。左上から右にいくにつれて10°方向、20°方向となって50°方向からは右下に行きます。そこから80°方向まで下の行を右から左に読んでいきます。

正対と真横は考慮していません。計算がそもそも要りませんから。

例えばRWY36の空港で040/30ktの風が通報されたとします。

40°方向は4列目を見ます。

Head 30kt×0.8=24kt

Cross 30kt×0.6=18kt

となります。

cos40°=0.77

sin40°=0.64

なので大きく外れていません。ギリギリかなと思った時は予め

Pilot’s Toolbox

というパイロット業界では有名なアプリをiPadやiPhoneに立ち上げておいてRWYのMAG HDGを入れておいてランディングクリアランスと一緒に通報される風を入れてリミットインを確認するのが良いでしょう。

◆◆

仮にtailだったとしても大丈夫です。

例えばRWY36、110/30ktなら

後方70°方向からの風です。

これはHead(Tail)とCrossの値が入れ替わって

Tail  0.3

Cross  0.9

になるので

大体Tail 9kt

Cross 27ktになります。細かく計算すると28kt少々になってしまうので実運航ではギリギリになる際は必ずもっと細かく計算しますがギリギリの風でなければとても使える計算です。

ジェット機になってもtail10~15ktを超えると厳しい機体が多いのでこの計算は非常に重要です。

試してみて下さい。

 

 

RNAV経路のMEA

RNAVと言えばGPSによってVORを結んだ航空路ではなく特定のポイント(FIX)同士を結び、効率よく飛ぶ航法の事です。

私が単発機に乗っていた頃には全然GPSなんてものは付いておらずがっつり地文航法をしていたのですが、最近の練習機には単発でもGPSが付いているらしく、先日アメリカから帰国したまだまだ初期訓練課程の後輩が「RNAV便利すよねー、Directガンガン要求できて。」とか言っているのを聞くと飛行機の見た目や性能は変わっていなくても航法や内部のハード、ソフト面では大きく進化しているんだなと感じます。

スマホの普及でGPS等が小型で安価になったことから始まったドローン業界よろしく、航空業界でも機上の装備の高性能化、小型化、安価の目覚ましい革新が感じられます。

初期訓練機に搭載されるようになったのですからそれでも採算が取れる程になったということでしょう。

◆◆
先日、エンルートチャートを見ながらRNAV経路(M,Y,Zの記号)を辿っていました。

MEAを調べるためです。
いくら上の高度が揺れたからといってMEA未満の高度に下げたりしないためにフライト前に確認していました。
これは初期訓練でも同じですよね。
するとRNAV経路は意外とMEA(Minimum Entoute Altitude)が、既存の航空路(A,B,G,R,V等)より高いことに気づきました。
ほぼ同じ場所を通るので経路における障害物間隔はそんなに変わらないのでは。

「GPSを使った経路だからMRAなどは無いはずなのになぜ。」

そもそもRNAV経路のMEAって通常経路の定義と違ったっけ?

そう思い色々調べました。
こういうものは飛行方式設定基準を見るのが一番です。
「第Ⅲ部RNAV」の 8章エンルート方式
これの8.1.6最低高度にはこう書かれてあります。

第Ⅱ部第3編第1章「VOR経路及びNDB経路」を参照の事

なるほど。通常の経路と同じということです。

書いてある通り第Ⅱ部の1.6.1最低高度
を参照してみると

経路の各セグメントに対して最小障害物間隔高度(MOCA)及び最低経路高度(MEA)を設定、公示する。

という見慣れた文章です。

MOCAはMOC(障害物から2000ft間隔)を設定した高度のことです。
またMEAは以下の内最大の高度
・MOCA
・経路を構成する航行援助施設の信号を適切に受信できる最低高度(MRA)⇒D=1.23√H の式で算出。(D:NM, H:ft)
・ATS通信を適切に受信できる最低高度
・ATS経路構成に適合する最低高度

となっています。
じゃあやはり通常経路より高度が高いのは?と謎は深まる限り。

よくわからなかったので近くにいた先輩に聞いてみると
「歴史的なもんじゃない?」
と言われました。

◆◆
RNAVといえばその歴史はたった10年程。
10年前の平成 19 年に広域航法の国際基準が制定されました。
これはまだ東京FIRと那覇FIRが統合されて福岡FIRになったばかりの頃です。

それから国交省はスカイハイウェイ構想を発表しました。
当時考えられていたのは、29,000ft以上をRNAV経路に義務化するという事です。
実際いまはそれ以下でも普通にRNAV経路はあります。

ただ、元々の目的が『スカイハイウェイ』だったので高い高度に設定されているようです。
先輩が歴史的なもの、と言っていたのも納得がいった次第です。

国交省の目標では長期目標(平成25年度~平成30年度以降)⇒航法精度±2マイルのRNAV経路
とすることで交通量をさらに増加させるとのことでした。技術的には0.3NM以内を飛ぶ性能を航空機は有しているので平成30年までには出来そうだなと感じます。

◆◆
つまり
・MOCA
・経路を構成する航行援助施設の信号を適切に受信できる最低高度(MRA)⇒D=1.23√H の式で算出。(D:NM, H:ft)
・ATS通信を適切に受信できる最低高度
・ATS経路構成に適合する最低高度
のうちの「ATS経路構成に適合する最低高度」
というのがポイントで歴史的にATS経路構成のRVSM運航高度であるFL290以上を想定しているからかなという結論に至りました。

改めて普通に考えると、同じ場所を通る通常経路のMEAと同じだと危ないですし、まさに「スカイハイウェイ」ということです。