RNAV経路のMEA
2017年1月25日 6件のコメント
RNAVと言えばGPSによってVORを結んだ航空路ではなく特定のポイント(FIX)同士を結び、効率よく飛ぶ航法の事です。
私が単発機に乗っていた頃には全然GPSなんてものは付いておらずがっつり地文航法をしていたのですが、最近の練習機には単発でもGPSが付いているらしく、先日アメリカから帰国したまだまだ初期訓練課程の後輩が「RNAV便利すよねー、Directガンガン要求できて。」とか言っているのを聞くと飛行機の見た目や性能は変わっていなくても航法や内部のハード、ソフト面では大きく進化しているんだなと感じます。
スマホの普及でGPS等が小型で安価になったことから始まったドローン業界よろしく、航空業界でも機上の装備の高性能化、小型化、安価の目覚ましい革新が感じられます。
初期訓練機に搭載されるようになったのですからそれでも採算が取れる程になったということでしょう。
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先日、エンルートチャートを見ながらRNAV経路(M,Y,Zの記号)を辿っていました。
MEAを調べるためです。
いくら上の高度が揺れたからといってMEA未満の高度に下げたりしないためにフライト前に確認していました。
これは初期訓練でも同じですよね。
するとRNAV経路は意外とMEA(Minimum Entoute Altitude)が、既存の航空路(A,B,G,R,V等)より高いことに気づきました。
ほぼ同じ場所を通るので経路における障害物間隔はそんなに変わらないのでは。
「GPSを使った経路だからMRAなどは無いはずなのになぜ。」
そもそもRNAV経路のMEAって通常経路の定義と違ったっけ?
そう思い色々調べました。
こういうものは飛行方式設定基準を見るのが一番です。
「第Ⅲ部RNAV」の 8章エンルート方式
これの8.1.6最低高度にはこう書かれてあります。
『第Ⅱ部第3編第1章「VOR経路及びNDB経路」を参照の事』
なるほど。通常の経路と同じということです。
書いてある通り第Ⅱ部の1.6.1最低高度
を参照してみると
『経路の各セグメントに対して最小障害物間隔高度(MOCA)及び最低経路高度(MEA)を設定、公示する。』
という見慣れた文章です。
MOCAはMOC(障害物から2000ft間隔)を設定した高度のことです。
またMEAは以下の内最大の高度
・MOCA
・経路を構成する航行援助施設の信号を適切に受信できる最低高度(MRA)⇒D=1.23√H の式で算出。(D:NM, H:ft)
・ATS通信を適切に受信できる最低高度
・ATS経路構成に適合する最低高度
となっています。
じゃあやはり通常経路より高度が高いのは?と謎は深まる限り。
よくわからなかったので近くにいた先輩に聞いてみると
「歴史的なもんじゃない?」
と言われました。
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RNAVといえばその歴史はたった10年程。
10年前の平成 19 年に広域航法の国際基準が制定されました。
これはまだ東京FIRと那覇FIRが統合されて福岡FIRになったばかりの頃です。
それから国交省はスカイハイウェイ構想を発表しました。
当時考えられていたのは、29,000ft以上をRNAV経路に義務化するという事です。
実際いまはそれ以下でも普通にRNAV経路はあります。
ただ、元々の目的が『スカイハイウェイ』だったので高い高度に設定されているようです。
先輩が歴史的なもの、と言っていたのも納得がいった次第です。
国交省の目標では長期目標(平成25年度~平成30年度以降)⇒航法精度±2マイルのRNAV経路
とすることで交通量をさらに増加させるとのことでした。技術的には0.3NM以内を飛ぶ性能を航空機は有しているので平成30年までには出来そうだなと感じます。
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つまり
・MOCA
・経路を構成する航行援助施設の信号を適切に受信できる最低高度(MRA)⇒D=1.23√H の式で算出。(D:NM, H:ft)
・ATS通信を適切に受信できる最低高度
・ATS経路構成に適合する最低高度
のうちの「ATS経路構成に適合する最低高度」
というのがポイントで歴史的にATS経路構成のRVSM運航高度であるFL290以上を想定しているからかなという結論に至りました。
改めて普通に考えると、同じ場所を通る通常経路のMEAと同じだと危ないですし、まさに「スカイハイウェイ」ということです。
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