Overweight Landing時の許容降下率は?

飲み会でENGINE FAILURE AFTER V1の話題になりました。
パイロットだけで飲んでいると共通の話題として仕事の話をしがちです。
離陸してすぐに片方のエンジンが停止した場合どうするか。

ジェッション(燃料投棄。別の言い方だとFuel dump。)してMAX landing weight以下にしてから降りるのか、緊急なのでそのままオーバーウェイトで降りるのか。

結論から言えば、安全の為に良いと判断できるのであればキャプテンの裁量で決めれます。
そしてその両方が正解。安全であれば、です。

「ところで、オーバーウェイトランディングだとどれ位の降下率まで認められてるんだっけ?」

という話になり、「確か300ft/minだったかなー」とか「それに安全率1.5を掛けた450ft/minじゃないっけ?」
など色んな意見が出ました。
初期訓練で耐空性審査要領について結構やったのになーと言いながらも、分からないことはすぐに調べる辺りが皆さん流石です。

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探してみると確かにありました。

耐空性審査要領の設計の欄です。
P.222-6
3-6地上荷重
3-6-2-1着陸状態においては飛行機は次の状態で接地するものとする。
c.『設計離陸重量(最大降下率よりも低い降下率での着陸における最大重量)で1.8m/s(6ft/s)の制限降下率』
つまり、最大離陸重量でも6ft/min=360ft/min以下の降下率で接地すれば強度的は保証されます。
ちなみにb.設計着陸重量(=最大着陸重)では 10ft/s=600ft/minまで強度が保証されています。これは通常の降下率に近いのでノーフレアですごい衝撃になりそうです。

T類は360ft/min以下の降下率で接地すれば強度は保証される。
というのは覚えておきましょう。

360ft/minの降下率は思ったより大きい印象です。やろうと思えばすこし接地が伸びますが、地面を撫でるような着陸はパイロットなら誰でもできると思います。
通常時はオートブレーキのセンサーが接地したのか迷うのでしませんが。

実際シングルエンジンになったら私ならレーダーベクターをリクエストしてチェックリストを完了しながら即行空港に引き返すと思います。
SID中ならとりあえずFollow、MHA位までの高度を獲得しといた方が何かと余裕が出ます。とくに混雑している空港なら。
VMCなら混雑状況を見て、トラフィックパターン1周で降りれるならDownwindに入ってもいいと思います。

シングルエンジンででもジェッションを選択する時ってどんな時なのか?と考えました。

1.大前提として性能上その重量では滑走路をオーバーランしてしまう。
2.又は脚に不安があるとき
2.1.パンクしている。
2.2ブレーキ火災等でタイヤが損傷している。
2.3そもそもタイヤが出ないから胴体着陸。
3.離陸後滑走路が閉鎖された。例えば自機よりも重篤なエマージェンシー機体があり着陸後の滑走路閉鎖が考えられ、ダイバートを余儀なくされた場合近くの滑走路が全て短すぎる時。

MECEからは外れてます。こういうのは考えても全部を網羅するのは不可能です。
だからこそ想像力って大事です。フライトは不確定要素が多すぎるのでツリー状に場合分けするのは「机上の空論」です。
実際に使えなければなりません。

月に一回とんでもないエマージェンシーが発生したら自分ならどうするかをイメージフライトしろと教官は言います。
これをやりだすとシステムのテキストを開いたりし始めることになるので永遠に終わらず夜が明ける、なんてことはザラだそう。

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もうすぐハドソン川の奇跡が公開されますが、たぶんサレンバーガー機長は両エンジンが止まった時のシミュレーションフライトをしたことがあったんじゃないかなと思います。
自分の機体の揚抗比は分かっていても、その場の降下率とGSからの進出距離は風向きで大きく変わるので現在位置から空港まで届くか即座に判断するのはとても難しいと思うからです。それを機長はすぐに判断していました。
本当にフライトは何が起こるか分からないのでなるべく乱してイメージフライトをすることが大事です。
そして分からないこと、操作の根拠が不明なものは徹底的に調べること、クロスチェックの仕方も決めること、それが上手くなる秘訣のようです。

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Avionics Lesson

Avionics Lessonという本を書店で見かけました。
イラストとタイトルのギャップがありすぎてどんな内容なのか気になって見てみると意外と良くて驚きました。
VORの仕組みをはじめ、理解するのが難しい分野がとても丁寧に解説されています。

送料はかかりますが日本航空技術協会のサイトからも注文できるようです。
http://www.jaea.or.jp/tosyo/index.html

重い機体と軽い機体、どっちが滑空できる?

先輩のお話で、
「同じ機体、同じ速度ならば重さの違いで滑空比はどう変わるか」
という話。

直感的には同じじゃないか?と私は思いました。
「あえていうなら軽い方が遠くまで飛べそう。。」


『結論から言えば重い方が良く飛んでしまう』
だそうです。

重さをW、揚力をLとして
”W2>W1である時、必要な揚力はL2>L1なので滑空比は悪くなる…というのは間違い。”
そういえば滑空比は別名「揚抗比」
同じスピードなら抗力Dを一定なのでL/DはL2/D>L1/Dですから重い方が滑空できます。

他の言い方でいうなら
”同じ滑空比を出すなら重い方がスピードが速いので余ったスピードをエネルギーに使えるので滑空比は重い方が良くなる。”
とのこと。


ポイントはあくまで『良く飛んで し ま う 』 ことだそうです。
飛行機が大きくなるほど高度処理が大変になるからな、というお話でした。

特にB767なんかはグライダーみたいで降下計画が腕の見せ所とか。話を聞いているだけでワクワクしました。

曲技飛行に思う飛行機の挙動を数字で理解すること

曲技飛行PilotのTakagi Yuichiさんのサイト

Aerobatic Channel

http://aerobaticchannel.blogspot.jp/
の今日の「Energy Managementに思う」の記事が面白いです。定量的に飛行機の挙動を考えつつも、最後は感覚だ。というお話。
こういうお話にすごくロマンを感じます。

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アクロバット飛行は飛行機の性能を極限まで使うので、迎え角は抗力が最大にならないギリギリの最も”イイ”ところを使うのだけれども、それをLoad factor計で測って操縦するのではなく感じて操縦されるそう。結果、予告のGでの運用が出来ていたのがすごいと言われたがそれは感覚的にできたことだ、というお話でした。


”何とも手前味噌な話題で恐縮ですが、実はこれは必然で、トリックでも何でもありません。限られた飛行性能を用いて競技を行う以上、効率を最大限にして飛行する必要があることは言うまでもないことですが、単にその結果このような数字が得られただけのことなのです。”

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とのことですがそのレベルにまで技術を磨き上げるのには相当な努力をなさっているはずです。

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旅客機の操縦は全て会社、製造者のマニュアルに従って行うのですが、フレア(着陸前の引き起こし)に関しては全然なかったりします。
JAPAが発行している「PILOT誌」の2012年のNo.2には「フレアを語る」というコーナーがありました。
そのコーナーでは機長と副操縦士のフレアのデータで比較して理想のフレアとはなんぞや、ということを定量的に語っているのですがそれがTakagiさんの記事に近いなと思いました。

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着陸は、結局のところ風も、滑走路勾配も、重量も毎回違うので同じ着陸条件は2度とありません。データはありますが最後は感覚です。
それにしても機長のグラフがとても綺麗なのでやはり経験がものをいうのかなという感じです。かっこいいですね。

興味がある方は日本航空操縦士協会http://www.japa.or.jp/の会員に登録すれば電子書籍を閲覧できるのでぜひご覧ください。(著作権の関係でアップできなくてすいません)

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