先行機と後続機の時間間隔と距離の関係

実機でのフライトをしているとシミュレータとは圧倒的に異なることがあります。

それは他機がいること。

他機のおかげでHDG指示からのベクターは来るわ、減速指示も来るわ、イメージフライトでは予想できないことが数多く起こります。

全ては飛行機同士の管制間隔に起因するのですが実際、管制官はどれ位の間隔を取っているのでしょうか。

管制官の見ているレーダー間隔に関して、AIMjを参考に考えると455,512辺りが参考になります。

その辺りに関して、空の大先輩である翼友の著者でもある小嶋さんに質問してみました。

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私の質問は以下の通り。

・国内ACCの中における飛行機の縦の(前後の)セパレーションは何マイルになってるのでしょうか。
ACC→ACCハンドオフ時は縦間隔15マイルとなっているのですがRNAV5運航はレーダー覆域内のためレーダーサイトから40NM未満/以遠での間隔、3NM/5NMが適用されることになると考えていました。
翼友も同じように書いてあり、納得していました。

ただ、実際の運航でエンルートにおいて縦間隔5NMということは無いような気がします。
同期に聞いても「5NMは流石に近すぎるでしょ」ということだったのですが確信には至りませんでした。

そこで私の考えではRNAVのエンルートに関しては「レーダー監視」のもとRNAV5の経路を自己監視でPBN運航しているのであって「レーダー管制」されてる訳ではない。したがって通常の10分20NMか、少なくてもACC間ハンドオフ時の15NMのセパレーションを取っている気がするのですがいかがでしょうか。
HDGをふられたりして、ベクターが始まってからが『レーダー管制』になり、3NM/5NMが適用になると考えます。
参考:AIMj 455,512

もし何かご存知でしたら教えて頂ければ幸いです。

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すると小嶋さんからは何とも丁寧なご返信をいただき、大変参考になったのでシェアさせて頂きたいと思います。
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日々、飛ばれている事から釈迦に説法かもしれませんが。。。

 エンルート飛行中のレーダー管制間隔についてご質問頂いたと思います。
 レーダー管制間隔は、管制方式基準Ⅳ-6-2の通り、レーダーサイトからの距離によって、
3nmまたは5nmが最小間隔となっています。
 また、離着陸においては、後方乱気流管制間隔が適用されています。
 一方、エンルートも、確かにレーダーサービスを受けながらの飛行ではありますが、最小10nm、通常15~20nmの距離をもって飛行してい ると思います。

 この理由は、管制官は管制間隔として概ね2min(Heavy Medium間の時間間隔)を標準として間隔を確保しています。
 例えば、FL300をM.74でGS420ktで飛行しているとしましょう。
 この場合、飛行機は1minで420÷6=7nm つまり2minで14nm必要となりますから、これ以上、先行する機体との距離が詰まるようであれば、後ろ側の航空機に減速の指示が来るかもしれません。

 またAPCHエリア飛行中として、12000ftを240KIAS(GS300kt)で飛行しているとしましょう。
 この場合、2minで進む距離は10nmですから、これ以上詰まる事があると、自分で考えて減速しなければ、先行機と詰まってしまう事になります。

 逆に言うと、「先行機との距離×30」が2min間隔の場合の適切なGSという事になります。
 私は、先行機との距離に応じて、この計算式を応用しながら間隔を詰めるべきか、それとも減速しておくべきか考えて運航しています。
 管制官から言われる前に、自分で間隔調整しておくと、余計な速度調整を受けなくて済みます。

 参考に2015のATSシンポジウムの資料をお送りします。
 これの33ページに間隔の絵がかいてあり、私も、この程度と把握しています。

 また、お会いできるのを楽しみにしています(^^)
 お互い、フライトを楽しみましょう!

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ということでした。感覚的にENRにおいて15NMくらいは空いてるよなー、と思っていたことの理由が明確に分かりました。

以来、ナビゲーションディスプレイに映っているTCASの表示から先行機との距離×30のGSを守るようにすると速度の指示が少なくなりました。また、指示が来るタイミングも大体予期出来るようになったのでとてもありがたかったです。是非使ってみて下さい。

また、2015年に行われた、一般財団法人 航空交通管制協会の【第37回ATSシンポジウム】の資料も大変参考になるのでご一読してみて下さい。

 

待機速度一覧 航空機区分 C,D

Autopilotで飛んでいるとHOLDINGのエントリー方法でさえもAutoで判断してくれます。
さらにHOLDING Speedもその時の重量や形態に合わせて最適な速度を自動で計算してくれます。
しかし、そのHOLDING Speedは公示されているスピードとは限りません。
自分で速度超過をしていないか判断して入力する必要があります。

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航空機の区分は (AIM641)
最大離陸重量での
・着陸形態における失速速度 Vsoの1.3倍
・失速速度Vs1gの1.23倍
のいずれか大きい速度で航空機の型式毎に設計上定まるものです。

この速度ごとに航空機区分が決まるのですが

航空機区分
C 121kt以上141kt未満
D 141kt以上166kt未満
となっており、日本の旅客機の殆どはこの2つとなっているのでそれらについて表にしました。

もともとAIM574やRoute manual Basicにも載っているものを切り出したものです。
待機速度3種

これをアンチョコに挟んでおいて、HOLD AS PUBLISHEDと言われたらCDUに入力して計算させた結果と見比べるようにします。

Autopilotのモニター

ジェット機の操縦というと

・操縦の入力に対して反応がゆっくりだから難しい

・システムが複雑

・オートだから楽

という様なイメージを持っていましたが実際に当たってるのは上二つで

オートパイロットを入れたところで、そのモニターには結構神経を使うなーという感想です。
確かに、人間にとって一番難しいと言われる等速直線飛行なんかやらせれば一級品です。何時間飛んでも10ftもずらさないでしょう。

しかし、上昇・降下となるとパイロットが神経を使って監視する必要があります。
例えばオートパイロットに何を守らせるのか。
Path、スピード、降下率
色々ありますが、厄介なのはスピードです。
航空法82条の2、及び施行規則179条にあるように空中には多くの速度制限があります。
法律ですからオーバーする訳にはいきません。
しかし、オートパイロットへの入力次第では速度制限よりもPath(経路)を守ることの方を優先してしまう場合があります。

具体的には、降下経路を守るモードで飛んでいて、降下と共に背風になったとします。
すると経路を守るためにオートパイロットはどんどん機種を下げて行こうとします。
すると10000ft以下での速度制限250Ktをオーバーしてしまいそうになります。

よって、巡航中も含めてオートパイロットのモニターにはかなり気を使います。
操縦の入力に対して反応がゆっくりだから難しくてシステムが複雑でオートだからこその難しさがある、
のがジェット機だと思います。

それでも4万ftの景色やRVSMでの正面からの航空機との交差の迫力は初期訓練では見れなかった景色なので幸せだなと思います。

また、オートパイロットの使い方の幅は風や天候によってかなり変わってくるのでPFの性格とセンスが出ていて
オブザーブをさせていただく度に新しい発見があります。

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逆にオートパイロットは賢いなーと思うのは例えば巡航から降下の時、10000ft手前で巡航速度からしっかり250Kt以下に減速し始めます。
第5管制業務処理規定管制方式基準)の
(Ⅱ)-1-7 にあるように

注 10,000 フィート以下への降下を指定したとき、操縦士は、法第 82 条の2に規定
された制限速度へ減速するため、10,000 フィート付近で一時的に水平飛行(level
off)を行う場合がある。

の条項をしっかり行ってその減速分も考慮してETAを計算してくれるあたりは本当に優秀だなと思います。
あとは風のデータさえさらに細かく自動でアップリンクできれば相当いい精度のETAが算出できそうです。

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余談ですが、航空法の本のラベル、同期の多くがこんな感じで数十条ごとに貼っているので参考にしてみて下さい。

条文等、どこに何が書かれているのか理解しておくことはパイロットにとってとても重要です。
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Avionics Lesson

Avionics Lessonという本を書店で見かけました。
イラストとタイトルのギャップがありすぎてどんな内容なのか気になって見てみると意外と良くて驚きました。
VORの仕組みをはじめ、理解するのが難しい分野がとても丁寧に解説されています。

送料はかかりますが日本航空技術協会のサイトからも注文できるようです。
http://www.jaea.or.jp/tosyo/index.html

追記:離陸後400ftに上昇するまでは旋回しないのはなぜ?

前に離陸後400ftに上昇するまでは旋回しないのはなぜ?というエントリを書きましたがその追記です。

最近私が1番力を入れて勉強しているのが飛行方式設定基準なのですがそのSIDのページにとても興味深いことが書いてありました。
※参照は使える航空書籍でもご紹介した飛行方式設計入門です。

V-2ページによりますと、
SIDの起点は滑走路離陸末端(DER:Departure End of Runway)です。(中略)上昇パスはDER直上5m(16ft)の高さから始まるものとします。しかし上記はむしろ名目上の話で(中略)DER上空通過以前に旋回を開始することも珍しくなく、このような飛行も保護する必要があるからです。上記のような事実を勘案するため、またDER手前に於いて旋回を保護するため旋回を行うような出発方式の場合、保護空域は滑走路の起点(離陸滑走開始点)から600mの地点にて開始されます。逆に言うと「滑走路の起点から600mの間において最低旋回高である120m(394ft)(DER標高上の高さ)に航空機が達して旋回を開始することはない」と仮定しているといえます
と記述されています。

つまり約400ftから保護空域は考えられているというわけです。

400ftまでは旋回しないというのはVFRの初期訓練からもやっていたことなのでSIDの保護空域の話が関わってくるかどうかというと微妙なとこなのですが、参考までに。

 

 

Earth CurveとILS

地球は丸い。という事は誰もがご存知ですが、実際飛行機にもその影響は大いにあります。
ILSは縦横のガイダンスをしてくれる精密進入のための航空保安無線施設ですが、その縦方向のガイダンスであるグライドスロープは地球の曲率に大きく影響されます。

下の図をご覧下さい。
青い線が地球の曲りだと考えて下さい。
接地点から地球への接線Dを引き、3°Pathに乗って飛行機は降下しているつもりですが実際は地球の曲率EC(アースカーブ)の影響で高度Hは接地点から遠くなればなるほど増えていかなければ接地点からの接線に対する3°のPathは維持できません。
EC
H=D・tanθ+EC
計算式はEC=0.024×(60.76×D)^2です。
※飛行方式設定基準の暫定基準p34参照

常に3度Pathで進入している飛行機はこれも考慮して降下しなくてはなりません。
「そんな少し位」と思っても飛行機の移動スケールだと全く無視できないくらい影響してきます。

「All About Airplanes」という外国のサイトの”ILS-Glideslope and the earth’s curvature”
という記事がとても参考になります。 http://allaboutairplanes.wordpress.com/2011/07/01/ils-glideslope-and-the-earths-curvature/

“Since the earth is a sphere we need to account for the curvature of the earth. Imagine you have a ball and you place a ruler exactly on the top of the ball. When you go out to the edge of the ruler, The distance between the ruler and the ball is greater than it is at the top of the ball. The same concept applies here.

The farther we are from the glideslope the more the earth curves away below us. So we were viewing the glideslope beam from the side while we were standing on the ground. It would appear to us that the glideslope actually curves up. At 1NM the curvature adds around 1 foot. At 2NM it adds around 4 ft. At 15NM, the earth curvature adds just under 200 feet.”

1NMで1feet, 2NMで4ft。曲率はどんどん大きくなるので15NMではなんと200ft。
大分違いますね。

 

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飛行方式設定基準になってからはアプローチチャートの真ん中にFAF以降、3°Pathで降りるなら「NM to DME」表示がされるようになりまりた。
ここが1NMあたり一律318ft(3°のPathのための高度)を足していった高度になっていなかったことから今回の話を調べるきっかけになりました。

 

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アプローチ中の飛行機の列の映像をみると遠く程下に曲がっているという人もいますがこれに関しては、グライドスロープの有効到達距離が10NM程度なのでそれ以前はECを補正せずに飛んでいる影響でそう見えるだけなのかもしれません。(未確認)
ヒースロー空港にアプローチする飛行機を早回しにした面白い映像があるのでご紹介します。

最後までお読みいただきありがとうございました!
計器飛行を始めたばかりなので至らない点はご指導いただけたらと思います。

管制方式基準の位置づけと航空保安業務処理規定

昔から比べるとシステムの技術が向上し、交通量の増加に比例して管制がより複雑化してきたことから、パイロットの技倆はコントロールの上手さだけでなく、クルーコーディネーションを含めた総合的なマネージメント能力が求められるという時代になってきました。

知り合いのキャプテンが「パイロットは空の法律家」と言うくらい、規則に関してはよく知っておくことで効率的な運航や快適性にも繋がってくるそうです。

運航のマネージメントをするにあたり、パイロットが従うべき規則はいくつかあって
まず大事なことは
■航空法
■航空情報(AIP、NOTAM)
の2つです。これらのルールに従って飛んでいるからこその安全です。

また、それら規則のもととなっている(航空路の設計方法等が載っている)ものがいくつかあり、
■飛行方式設定基準
■暫定設定基準
■航空保安施設設定基準
■管制方式基準

があります。これらは1度目を通しておくべきだと教えられてきました。

その中でも、管制に関する基準である「管制方式基準」に関しては
管制官の方々が離着陸の間隔を設定を指示する根拠となっているのでソロフライトに出る頃には知っておく方がいいと思います。オーラル審査でも管制間隔について聞かれるのでその時に初めて聞いた、という訓練生は多いのではないでしょうか。

そんな管制方式基準ですが、何なのか?ということを私もフライト訓練が始まって半年位してやっと理解したのでその概要を書きたいと思います。

航空保安業務に従事されている管制官の方々は
航空保安業務処理規定というものに従ってお仕事をされています。
※詳しくは国交省HPを参照。 http://www.mlit.go.jp/koku/15_bf_000317.html
この航空保安業務処理規定、13章に分かれていて内容は以下のようになっています。

【航空保安業務処理規定】
第1 総則
第2 航空事故処理規程
2-2 航空機の捜索救難処理規程
2-3 航空機不法奪取事件処理規程
第3 消火救難業務規程
第4 運航情報業務規程
4-2 航空情報業務規程
第5 管制業務処理規定
第6 無線業務処理規定
第7 航空灯火電気施設業務処理規定
第8 管制通信業務処理規定
8-2 航空衛星運用業務処理規定
第9 機械施設業務処理規定
第10 制限区域内工事実施規定
第11 除雪作業実施規定
第12 警備業務処理規定
第13 その他業務処理規定(航空機の操縦練習許可事務等)

これの第5章にあるのが管制業務処理規定ですので管制方式基準のことを「第5管制業務処理規定」と呼ぶのが正式です。
鳳文書林さんで購入ができます。毎年更新してるんじゃないか、というくらい改訂されていきますがその度に差し替えを注文することができます。
http://www.hobun-books.com/products/detail.php?product_id=10

パイロットは規則を覚えるのが仕事じゃないのかと思うくらい覚える事は多いですが
FLIGHT LOGBOOKのブログで有名なflyingtonyさんの2014.4.14の記事にあるように
”特に新米副操縦士や新米機長、そして新米テストパイロットになった頃は自分に経験が無いのでそれを補うために、知識だけでも教官を追い越してやろうと思い、あらゆることを勉強しました。”
というくらい今はインプットしすぎくらいが丁度いいんだと思って一緒に頑張っていきましょー。

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