RNAV経路のMEA

RNAVと言えばGPSによってVORを結んだ航空路ではなく特定のポイント(FIX)同士を結び、効率よく飛ぶ航法の事です。

私が単発機に乗っていた頃には全然GPSなんてものは付いておらずがっつり地文航法をしていたのですが、最近の練習機には単発でもGPSが付いているらしく、先日アメリカから帰国したまだまだ初期訓練課程の後輩が「RNAV便利すよねー、Directガンガン要求できて。」とか言っているのを聞くと飛行機の見た目や性能は変わっていなくても航法や内部のハード、ソフト面では大きく進化しているんだなと感じます。

スマホの普及でGPS等が小型で安価になったことから始まったドローン業界よろしく、航空業界でも機上の装備の高性能化、小型化、安価の目覚ましい革新が感じられます。

初期訓練機に搭載されるようになったのですからそれでも採算が取れる程になったということでしょう。

◆◆
先日、エンルートチャートを見ながらRNAV経路(M,Y,Zの記号)を辿っていました。

MEAを調べるためです。
いくら上の高度が揺れたからといってMEA未満の高度に下げたりしないためにフライト前に確認していました。
これは初期訓練でも同じですよね。
するとRNAV経路は意外とMEA(Minimum Entoute Altitude)が、既存の航空路(A,B,G,R,V等)より高いことに気づきました。
ほぼ同じ場所を通るので経路における障害物間隔はそんなに変わらないのでは。

「GPSを使った経路だからMRAなどは無いはずなのになぜ。」

そもそもRNAV経路のMEAって通常経路の定義と違ったっけ?

そう思い色々調べました。
こういうものは飛行方式設定基準を見るのが一番です。
「第Ⅲ部RNAV」の 8章エンルート方式
これの8.1.6最低高度にはこう書かれてあります。

第Ⅱ部第3編第1章「VOR経路及びNDB経路」を参照の事

なるほど。通常の経路と同じということです。

書いてある通り第Ⅱ部の1.6.1最低高度
を参照してみると

経路の各セグメントに対して最小障害物間隔高度(MOCA)及び最低経路高度(MEA)を設定、公示する。

という見慣れた文章です。

MOCAはMOC(障害物から2000ft間隔)を設定した高度のことです。
またMEAは以下の内最大の高度
・MOCA
・経路を構成する航行援助施設の信号を適切に受信できる最低高度(MRA)⇒D=1.23√H の式で算出。(D:NM, H:ft)
・ATS通信を適切に受信できる最低高度
・ATS経路構成に適合する最低高度

となっています。
じゃあやはり通常経路より高度が高いのは?と謎は深まる限り。

よくわからなかったので近くにいた先輩に聞いてみると
「歴史的なもんじゃない?」
と言われました。

◆◆
RNAVといえばその歴史はたった10年程。
10年前の平成 19 年に広域航法の国際基準が制定されました。
これはまだ東京FIRと那覇FIRが統合されて福岡FIRになったばかりの頃です。

それから国交省はスカイハイウェイ構想を発表しました。
当時考えられていたのは、29,000ft以上をRNAV経路に義務化するという事です。
実際いまはそれ以下でも普通にRNAV経路はあります。

ただ、元々の目的が『スカイハイウェイ』だったので高い高度に設定されているようです。
先輩が歴史的なもの、と言っていたのも納得がいった次第です。

国交省の目標では長期目標(平成25年度~平成30年度以降)⇒航法精度±2マイルのRNAV経路
とすることで交通量をさらに増加させるとのことでした。技術的には0.3NM以内を飛ぶ性能を航空機は有しているので平成30年までには出来そうだなと感じます。

◆◆
つまり
・MOCA
・経路を構成する航行援助施設の信号を適切に受信できる最低高度(MRA)⇒D=1.23√H の式で算出。(D:NM, H:ft)
・ATS通信を適切に受信できる最低高度
・ATS経路構成に適合する最低高度
のうちの「ATS経路構成に適合する最低高度」
というのがポイントで歴史的にATS経路構成のRVSM運航高度であるFL290以上を想定しているからかなという結論に至りました。

改めて普通に考えると、同じ場所を通る通常経路のMEAと同じだと危ないですし、まさに「スカイハイウェイ」ということです。

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About KC
Pilot訓練生5年目。事業用操縦士・多発限定・計器飛行証明取得。

6 Responses to RNAV経路のMEA

  1. cizuccio says:

    以前、同様の疑問を持って調べたことがあります。(マニアックな詮索の域を出ませんが)

    飛行方式設定基準は持っていないので、とても参考になりました。

    ご承知のとおり、RNPでないRNAVはレーダー監視が必須のため、RNAV経路のMEAにはMVAの影響が大きいのではないかと思います。

    ほかに、横田や岩国のACA、また、各種の制限空域を越えるところは、そこだけ唐突にMEAが高くなっていることがあります。しかし、羽田→能登便がFL260でY885から”direct GORYU”を飛んでいて、途中でFL220を希望したときに、そのまま承認されるようなケースを見るので、MOCAとMVA的に支障なければMEAはキャンセルされることもあるのでしょうか。

    将来的にエンルートもRNPになったり、ADS-Bを併用してMVAも下がるなどの施策があれば、なにかと見直されるところかもしれません。

    • KC says:

      DIRECTとDESENDの許可があればMEAを下回っても飛行できる事はよくあります。
      Y885はMEAがFL240,MOCA 8000ですからGORYU経由になれば上記は可能かと思われます。
      これはMOCAとMVA基準と見て間違い無いでしょう。
      おっしゃる通り、MVAは間違いなくRNAVルートにも関わってると思います。

      将来的には僕はエンルートがADS-B義務化、そして「ハイウェイトランジションルート」とでも言いますか、STARよりも最短経路でFAFまで誘導するRNP適合機専用の短縮転移経路が出来ると考えています。
      「空の旅を科学する」という本にも書かれている通り、best equiped, best serve方式になって行くのと、政府がRNAV2以下にしようという見解が一致していくので管制の濃密化、高度化は進むばかりかと思います。

  2. orande says:

    KCさんお久しぶりです!
    ブログを楽しみにしておりましたので、投稿がUPされているのを知った時は一気に拝見してしまいました。

    RNAV経路のMEAについて、自分でも奥深くまで調べたことがなかったのでとても勉強になります。

    とくに計器飛行に関連するものは気になってしまいますね。

    最近はトラベル関連の記事も旅行の参考にしております。

    細かいことについて色々質問したいときにはメールの方へ質問してしまうかもしれませんが、宜しくお願いいたします。

    • KC says:

      お久しぶりです。
      飛行方式設定基準は本当に開くたびに学びがあるのでしっかり調べながらフライトしたいと思います。
      旅行も最近はフライトに忙しく(仕事が楽しすぎるゆえ)行けてませんが見聞を広げに今年は色々と行って足で情報を稼ぎに行きたいと思います。

  3. DERA says:

    はじめまして。

    既存のRNAV経路は、DME/DME/IRUを測位センサーとして設定しているため、DMEの受信状況上MEAが高くなる場合があります。レーダー覆域やレディオ覆域にも大きく影響を受けます。

    また、経路の設定及び保守には飛行検査を要しますが、MEAを低く設計するほど検査本数が増加してしまう傾向があります。飛行検査に使用する機材及び人員が限られている中、費用対効果を見据えてある程度のMEAで切らざるを得ない状況です。

    今後、GNSS機のみに適用されるRNAV経路が設定されたら効率的になりますね。

    • KC says:

      DERA様
      コメントありがとうございます。
      なるほど。ターミナルエリア飛行検査はよく拝見するのですが航空路でもされるんですね。
      初めて知りました。コストとの兼ね合いなど、大変勉強になります。
      CABの方ともお話してみたいと思いました。
      GNSSのみのルートができて各空港の処理能力も上がりEDCTの無い運航が出来ると日本全体として効率的ですね。

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