変針時の距離計算

大学の後輩で他社のMPLの訓練生がいよいよ訓練ということで初期訓練に使える変針時の計算について書きたいと思います。

訓練生に限らずパイロットは、「○○度変針するには何秒かかりどれくらいの距離が必要か」というのをしょっちゅう計算します。

特に周回進入においては時間を測ってターンの起点のタイミングを作るからです。

難しくはありません。一言で言うなら高校の数学ⅡBの内容が出来れば計算できます。

◆◆

circle to 16R

例えば、羽田34Lから16Rに周回進入する場合を考えます。
VORアプローチの場合はFinal Courseは332°で滑走路(337°)に対しては5°ずれています。
周回進入では基本的に45°カットでDownwindに乗っていくので337°+45°=022°
Final Courseからはトータル5°+45°=50°変針することになります。

トラパタ(トラフィックパターン)の時は90°変針のため計算がとても簡単なのですが周回進入だとこういった中途半端な角度の変針もあり得ます。基本的には以下の手順で求められます。

<手順>
1、その時の速度を決める
2、旋回半径を求める
3、作図して三角関数で距離も計算

◆実際に計算してみると◆
1.速度はFLAPにもよるので各々の飛行機の進入速度によりますが、例えば150ktとします。

2.旋回半径はパイロット電卓でもいいですし、パイロット手帳の付録のp.60の表を使ってもいいです。
150kt、25°バンクだと0.7くらいです。

3.作図しないと旋回中の進出距離が分からないので作図します。

上の図を拡大して点線で図形を足して三角形を作図しています。半径0.7NMの弧の長さを考えるよりもCROSSWINDに乗った時どこの位置まで進出しているか知るにはこの作図が楽です。

(フリーハンドなのでスケールが正しくないですがこんな感じです。)
circle to 16R2

上図で角度は求められていますし各三角形の底辺の長さがわかっていますのであとはtanを関数電卓で計算すればいいだけです。

circle to 16R3

これによりCROSSWINDにロールアウトした時には0.32NM進出していることが分かります。

タイムチェックのタイミングはCRS332にから022に旋回開始した時か、022に向いた時の2パターンが考えられますのでどちらも計算しとくとタイムチェックを忘れたときのセーフティーネットになります。

同様にしてCRS022から337の時も作図して45°変針の時の進出距離を求めてみましょう。150kt、Bank25°で0.3NM弱になるのではないでしょうか。

もちろん上記の計算にはBankレートは考慮されていません。0秒でBankを確立することは不可能なのでその分の余裕を考えた秒数を自分なりに持っておくことが大事です。

◆◆

パイロットの仕事というと「操縦」を思い浮かべると思いますが、準備が8割だと感じます。

アプローチチャートは同じなのに乗る機種ごとに進入速度が違うため、操縦方法が異なるからです。そのためにはこのような計算が必要です。

また、一度計算すれば万全という訳ではなく無風で計算しておいて、当日風によってBankの使い方を変えるのが操縦の醍醐味だと思います。これが残りの2割。

毎回反省点がでるのでその度に改善していくやりがいがあります。

周回進入はオートパイロットでもできなくはないですが、どうしてもコンピュータは操縦が遅いのでマニュアルでスムーズに操縦する方が上手くできる気がします。

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About KC
Pilot訓練生5年目。事業用操縦士・多発限定・計器飛行証明取得。

4 Responses to 変針時の距離計算

  1. とも says:

    操縦以外にもたくさんあり フライト中は気が抜けないのですね~ 私たち乗客を安全に送り届けて頂けていることに 今一度感謝です(*^O^*) いろいろ天候や風向きとかありそうですし~ とっさの判断力いりますね!!

    • KC says:

      ともさん
      コメントありがとうございます。実際のフライトでは絶対に風は一定ではないのでそれに合わせた操作をするためのとっさの判断力が求められます。突発的な事象に対して考えながらではなく反射的に操作できるように訓練しています。

  2. orange says:

    KCさん、こんにちは。

    距離計算の求め方を作って下さり、ありがとうございます。
    とっても分かりやすいです。

    KCさんが作って下さったような、計算を使った内容のものは参考書では見かけないので、本当に勉強になります。

    図の内容ですと、332と90度の角度の付近から旋回を始めると(滑走路の手前0.32NMから)、CROSSWINDにロールアウトした時には0.32NM進出していて、合計で0.64NM距離が必要ということで大丈夫でしょうか?

    サークリングアプローチが行われることがある空港は、仙台、大館能代、大阪、高知、宮崎、鹿児島、福岡などがありそうですね。

    降下開始地点の計算も必要になってくると思いますので、事前の準備がいかに大事かということを、改めて思いました。

  3. KC says:

    Orangeさん

    Finalにいる時、滑走路の手前、どこからサークリングに入るかは「滑走路が見え」かつ「周回進入区域内」に入った時、となるので一概に手前0.32NMとは限りません。実際はVISにもよりますが4.5NM前後から周回進入に入ります。

    CROSSWINDに入った時0.32NM進出しているのはおっしゃる通りです。
    しかし、旋回中の距離は図のような直線ではなく「円弧」になるので「旋回半径0.7NM×2×π×50/360°」の距離がかかります。

    CROSSWINDは一般的に1~1.5NMとることが殆どです。そこから逆算するとCROSSWINDの必要距離が出ます。その値から先ほど進出している0.32NMを引けば残りのCROSSWINDの距離が出ます。

    次にCROSSWINDからDownwindへの旋回半径も、FianalからCROSSWINDと同じように作図するとDownwindの何マイル手前から旋回を開始する必要があるか分かります。
    問題はこの旋回開始タイミングがタイムチェックによってのみわかるということです。地上物標があれば別ですが海上では見え方では難しいです。(実際はGPSやWaypointをコンピュータに入力すれば精密に出来ますが完全にマニュアルで飛ぶ前提で計算。)

    そこでタイムチェックのタイミングを
    ①Final~CROSSWINDの旋回開始
    ②CROSSWINDに向いた時
    の2カ所設定しています。(①で忘れた時は②からタイムチェック)

    この2点からDownwindへの旋回タイミングまでの時間を計算しておいて
    実際のフライトでは風も考慮して所定の時間が経過した時にDownwindへ旋回を開始すると上手くいきます。

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